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第118話
見ればそこには、平茅先輩を始めとする待ち合わせ相手の面々が揃ってた。
髪が乱れるからやめて、って怒ってるあきくんが可愛い。
多分髪云々じゃなくて、頭ぽんぽんされてるトコを俺に見られるのが恥ずかしい、とかそんな感じの抵抗なんじゃないかな。
可愛い。
「あぁぁっ、堂上様ぁっっ…!」
突然、一瞬前まで俺とやり合ってた筈のアサトが黄色い悲鳴をあげた。
「ん? また可愛い子がいるね。鈴原君の友達かな?」
「はいっ! 真城 愛里 って言います!」
あ、やった! ヤダって言われてたのに、一瞬で友達に昇格した!
「こんな所で堂上先輩にお会い出来るだなんて僕……、光栄です! 鈴は…トアのお知り合いだったんですね!」
あ、更に名前呼びでもう一段階あ〜っぷ。
「最近ね、七瀬伝いに知り合ったんだ」
「そうなんですか! すご〜い!」
これ可視化できてたらさぁ、撒き散らされたハート噴水の如し。
俺達の頭にも降り注いでる勢いだよね。
そしてそんな堂上先輩相手にうっとりメロメロを隠そうとしないアサトを見る鞍馬の顔は、まるで苦虫を噛み潰したかのよう。
クックックッ、ザマーミロ。
「真城君は…」
「そんな真城君なんてっ! アサトって呼んでください!」
「…うん、真城君は今、彼と、デート中なのかな?」
あ…、堂上先輩、今アサトのこと躱した!
モテる男って、やっぱ踏み込んじゃいけない線引き、しっかりしてるんだなぁ。
モテない奴だったら今の、絶対ニヨニヨしながら名前で呼んじゃうとこだもん。
さらっと名前呼び回避した上、相手のオトコの存在チラつかせるとは……
この人やっぱり、モテ慣れてますな‼
「そうですけど、大丈夫です! 堂上先輩は、なんて言うかぁ…、僕たち1年生からしてみたら、芸能人や神様みたいな存在なんです! だからだいじょうぶですっ!」
だいじょうぶ……じゃないだろうな。
鞍馬、自分は平気で浮気するクセに、相手に余所見は許さない、ってサイテー男だもん。
アサト君、そこら辺でやめておきなさいな。
助け舟を出すべきか、出さぬべきか、それが問題だ。なんてひとりハムレットを気取ってた俺。
よし!一発鞍馬を揶揄う方向性で逆に拗れさせるか! なんて可愛いイタズラを仕掛けようと動いたその刹那。
「──堂上、予約時間があるんじゃないのか?」
平茅先輩が駅舎の時計を指差しながら告げた。
「ああ、そうだった」
その平茅先輩の隣には、あきくんに滾々と説教されて縮こまってる陽成さんの姿。
きっと平茅先輩は、こっちの事情関係なしに、陽成さんを助けようと思って声をかけてきたんだろう。
いやぁ、愛されてますね陽成さん。………って!
「そうだ! 俺も堂上先輩に文句言いに来たんだった!」
「ん、そうなの?」
「ちょっと鈴原! 堂上様に失礼じゃん!やめなよ!」
「うるさーい! 堂上先輩!アンタよりにもよって、純粋無垢なあきくんにとんだ嘘教えやがって!」
「あはは、ごめんごめん。ヨカッタ?」
「ヨすぎて失神だわ! 殺す気か!」
「はははっ、答えてくれちゃうんだ」
「今度からは、トバない程度にキモチイイ知識を伝授して下さい!」
「あははは、了解」
よし。文句終了!
やっきにっくやっきにっく♪
「じゃあ、ゴハンいきましょー!」
言いたいこと言い切ったことに満足して、スポンサーの堂上先輩の腕を掴んで焼肉屋へと足を向ける。──と。
「十碧っ!」
物凄い勢いでその手を外された!
「他の男とくっついたら駄目だよ!」
「………あははっ」
笑ったのは堂上先輩だ。
俺と言えば、あきくんのヤキモチっぷりと独占欲に悶絶寸前。その場にしゃがみ込んで、萌え転がるのを必死に堪えていた。
だめだ!胸が苦しい!萌え殺される!!
「どうしたの十碧! 大丈夫⁉」
「だっ…、だいじょーぶ…、ふぐっ、あきくんが…っ、かわいすぎるっっ…!」
「「………………」」
「バカらしー。オイ、アサト。行くぞ」
「はぁ〜い、先輩。堂上先輩、失礼します。じゃあね、鈴原」
律儀に俺にも挨拶していくアサトに、震えながら手を上げて応える。
「またガッコーでね!」
「はいはい」
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