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第1話

「まるで使いものにならない子だね。周りを不幸にする子なんかいらないよ!」 ──穢らわしいッ! ──さっさと死んでおしまい! ましろの世界はいつも痛かった。 聞こえてくる音は、ましろを傷つけるものばかり。 見えるものは、ましろを嘲笑う意地悪なものばかり。 耳を塞いでも、目を閉じても、誰も助けてくれない。 剥き出しの心を家族であるはずの祖父母は何度も鋭利な刃物で傷をつける。 けれど、それだけならばましであった。痛いのは心だけだから。 時にして折檻だと木の棒で手や背中を何度も打たれた時は、いつも心の中で「死にたくない」声にならない訴えを叫んでいた。 喉の奥から悲鳴が迸るたび、その声を聞くと親代わりである祖父母たちはますます暴力の手を振り上げる。 体の弱いましろには、ほんの少しの痛みでさえ耐え難い事だ。 暴力をふるわれる最中に気を失い翌日、冷たくてかび臭い古びた蔵の中で目を覚ますのだ。 いつ死んでもおかしくない。 こんなに苦しいのなら死んでしまう方が楽なのかもしれない。 でも、その度ましろを引き止めるのは遠い昔の優しい温もりだ。 ──生きなさい。 「おかあさん」 どうして僕を産んだの? ──生きなさい。ましろ。生きて、そして幸せになるの。 ほんの少しバランスを崩してしまえばあっという間に散ってしまいそうな心を繋いでいたのは、顔もわからない母の言葉だった。 だけどもう、ましろの心はぼろぼろで、可哀想なほどに壊れかけていた。

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