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緋色が落ち着くまで抱き合っていた 「萌葱…体痛いよね?苦しいよね…ごめんね…俺のせいだ…」 「ごめんね…俺がこんな…教室であんなことしたから…」 「萌葱…萌葱…」 「うん…」 「俺…俺…ずっとずっと…お前が好きだった…」 「うん」 「でもね…家族のこととか…萌葱の仕事のこととか…考えたら…」 「うん…そうだね…俺たちはやっぱり同じだったね…」 「こんなに好きなのに…どうして…」 「…何で…だろうね…こんなことになるなんて…想い合ってたのに…何で…気が付かなかったんだろう…いつもお互いの考えること手に取るようにわかってたのに…」 お互いの気持ちに気づいていたら…何か変わってた? こんな形で…苦しい思いで… 気持ちを確かめたくはなかった… 愛する人の前で善がり狂うことも無かった? 「緋色…大好き…」 「俺も…大好き…」 これから残り少ない高校生活…きっと…もっと… 「萌葱…立てる?」 「ん…大丈夫…」 とは言ったものの体は言うことを聞いてくれない… 「蒼にぃ…呼ぶ?母さん?」 「…蒼にぃ…今日は藍瑠さんと一緒だから…」 「瑞季さんは?」 「…」 「…連絡してみる…」 御木本瑞季さんは昔一緒に住んでいた兄のかつての交際相手…いろいろあったみたいだけど今は何でも解り合える親友。俺たちのことも可愛がってくれて本当の兄みたいな人。 『瑞季さん…』 『おー!!ひぃくん!久しぶり!ってどうした?その声…』 『助けて…』 『は?どこいんの?』 『学校…教室…』 『わかった。すぐ行く』 そうしてやって来た瑞季さんは俺の姿を見て固まる 「もえ!?何で…」 教室に充満する雄の独特のにおい…窓を開け放ってたけど換気間に合ってなかったみたい… だからすぐに状況を把握したんだろう 「ちょっと待ってろ。俺だけじゃ萌葱運べねぇ…圭呼んできていいか?」 圭翔さんは瑞季さんの交際相手。蒼にぃの交際相手である藍瑠さんの元交際相手である。 体つきも大きくて豪快な人。 すごく優しくて高校時代は蒼にぃと並んで人気者だったみたい。今でもすごくモテる 「うん…お願い…」 その場で連絡をしてくれて近くにいたらしい圭翔さんはすぐ来た 「萌葱…何で…」 「ごめんなさい…俺が…悪いの…」 「ここで話していても仕方ない…俺らんち連れてく」 二人は今同棲中。大学を出たら入籍する。そんな二人の大切な場所にこんな俺が行って良いの? 「萌葱。余計なこと考えてるだろ。大人しくついてこい」 圭翔さんは人の心に敏感な人だから隠し事は通用しない 「わかりました…」 大人しく圭翔さんに抱えられて瑞季さんの車に乗せられる。勿論緋色も一緒に

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