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翌日。午前中で仕事が終わった俺は自宅でゆっくりしてた。 テレビはつけているけれど内容はなかなか入らない… ぼんやりしていたら着信音が響く。 プライベート用だから多分母か誰かだろう。相手を確認せずに電話に出ると聞き心地のいい低い声が聞こえる 『もしもし。malice de l'ange 心です』 「オーナーさん」 『昨日の話ですが』 「はい!」 『みやびが身請けを承諾しました』 「よかった!」 嬉しい…頑なに拒んでいた空雅が承諾してくれるなんて。これで…緋色を忘れられる…はずだ。 空雅を好きになって好きになってもらって…そして… って…本当に最低だな…それでもやっぱり空雅は誰にも渡したくはない…緋色の時何も出来なかったんだ…だから空雅のことを… すぐに準備をして指定された場所へ向かう。 入金確認出来たらしく事務所に呼ばれる 「部屋は…3101でいいですか?」 3101号室は空雅と初めてあった思い出深い場所。 内装も好みだったし即決した。キャストを身請けするといくつもあるマンションの一室もついてくる。 その部屋は自由に使っていいらしい。自宅にする人もいるし事務所にする人もいるし身請けしたキャストの家にする人もいるし倉庫にする人もいるしそのまま売りに出してしまう人もいる。俺は自宅にしようと思ってた。理由は最近過激なファンが勝手に部屋の前にいたりすることも続いたし友人だと思っていた仕事仲間に襲われかけたことがあるから。 malice de l'angeが持っているマンションはかなりセキュリティが特化していて安心感もあったから。 手続きを済ませ暫く待つように言われて。早く空雅に会いたくてそわそわする。 「これが部屋の鍵です。みやびはすでに向かわせています。木築さん。みやびを泣かせないで…あいつは本当にこれまで辛いことも多かったんです。…昨日も客だった男に首を絞められ危うかったんです…もしかすると少し怯えが見えるかもしれません」 そんなことがあったんだね…だから一人でいられなくてあの彼と過ごしていたのかな? もっと早く俺が決めていたら俺を頼ってくれたのかな?そう思うと苦しい 「オーナーさん」 「はい」 「俺は…みやび…空雅を泣かせるようなことはしない…そう約束したいところです…しかし…すいません。正直それは出来ない。仕事柄なかなか会えないこともある。他の人と絡みだってあったりする。寂しがりやな空雅を泣かせてしまうかもしれない…でも俺は空雅のこと大切だと…必要だと…それは断言します。側にいられる限り俺は空雅とともにいます」 「…わかりました。空雅のこと…よろしくお願いします…」 深々と年下の俺に向かって頭を下げる姿に胸が熱くなる… 親子ほど下の俺にこれだけ…それはきっと空雅のことを本当の子供のように思っていたからではないかと…そう思えた。 「空雅のことがとても気がかりでした。初めてあったときあいつは今にも壊れそうで…でも空雅の中にある強さに俺は引かれた。だから声をかけたんです。その読みは間違ってなかった。空雅は多くの人を救ってきた…本人は気がついていないけど…空雅と会った人は皆いい変化があったんです。貴方も抱えている何かが少しでも軽くなることを願っています…あなたは空雅が引かれた相手です。だからあなたはきっと…すいません…喋りすぎましたね…よろしくお願いします」

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