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ラブレター編 ①

 今日、純は人生初のラブレターをもらった。  純が通うのは男子校だから、こんな機会なんてあるとは思ってなかったので、驚きが大きい。これをくれた相手は近隣の共学高校の女の子で、帰る時に校門の前で話し掛けられて渡された。純が動揺しているうちに、自転車に乗って行ってしまったので、話という話はしていない。  可愛い字で書かれた手紙を見ながら純はつい、にやけてしまう。内容は、一年前から好きだった事、友達からでいいので付き合いたいというような事が書いてあった。封筒にはもう一枚小さなメッセージカードが入っていて、電話番号とメールアドレスが書いてある。  正和と付き合っているから、もちろん断るけれど、好意を寄せられて悪い気はしない。それに、清楚な感じで可愛い子だった。恥ずかしそうに頬をほんのり赤くしていたのが印象的で、こういうのはやっぱり嬉しい。ちゃんと男として見られているんだと思うと、少し自信も持てる。 「じゅーん。ニコニコして何か良いことあったの?」 「っ、正和さん!?」  いつの間にか部屋に入ってきていた正和の姿に、肩をビクッと揺らして、反射的に手紙を教科書の下に隠す。ご機嫌に聞いてきた彼に対して、純の声は裏返ってしまい、彼が顔を(しか)める。  なんとなく見られたら良くない気がして隠してしまったが、この行動が命取りになるなんて、この時は考えてもみなかった。 「純……いま何隠したの?」 「な、なにも……」  彼の低くなった声音に怖くなって、ついそんな事を言ってしまう。ここで堂々と見せていれば、と後に後悔することになるとも知らず、この時の純は軽い気持ちだった。 「なにも?」  彼が眉をピクリと動かして、純の言葉をそのまま返す。ゆっくりとこちらに歩いてくると、勉強机の上に手をついて、先ほどの教科書をペラッとめくった。 「……これは何?」 「これは……その……っ」 「見せて」 「っ……」 「純」  咎めるように名を呼ぶ正和に、観念して手紙を渡す。どうやら許可なく見る気はないらしいが、威圧的な彼に逆らえるわけがなかった。正和は、二つ折りにされているそれを開いて目を通す。

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