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第19話 EP1:愛引 闇の中で

―……闇の中から視界が戻った時、僕とハルリオくんは背の高い男達に囲まれていた。 「…………」 闇族……のアルファが……五人……? 僕は視界が戻って辺りを見回し、直ぐに視線を伏せた。 それ以来、顔が上げられないまま、僕は地面の……ローブから覗いている靴の先を見ていた。 ハルリオくんはカタカタと震えて僕の胸に顔を埋めている。 そう、それで良い。これ以上怖い思いをさせたくない。 だって、さっき……この闇族達は明らかに悪意を含んだ侮蔑が浮かんだ黒い瞳で僕達を見下ろしていた……。 「――オメガはいらないのだが……。しょうがない……その子供の世話係として取りあえず生かすか」 「まぁ……そうだな」 「うん。賛成。必要以上に光族には触りたくないし」 「非力なオメガだしね。良いんじゃない?」 「……!」 な、何とか……命だけは、今のところ保障……される? 「それで……? 光族は誰が触れる?」 「そんな世話は、アイツらにやらせればいいだろ」 「ハイブリット・イリーガルに?」 「そうだ」 そしてどうやら方針が決まったようで、闇族達は僕とハルリオくんに特殊な重力の枷を手足に着けて出て行った。 コレは鎖等が付いてないけど、術者が決めた範囲しか移動出来ないみたいなんだ。 僕はハルリオくんの手を引いて……連れて来られた場所を歩いてみた。 連れて来られた場所はどうやら…………洞窟? ヒンヤリしていて……静か。 大体五メートルくらい歩くと、足が重くなって動かなくなる。 どうやら行動範囲はここまでのようだ。 「……はぁ……」 僕は思わず何とも……溜息が出た。 そして適当に座って、ハルリオ君を抱きしめた。 するとハルリオくんがぐすぐすと泣き始めて……。 「~~……みーとなちゃ……ぅえッく……」 「ハルリオくん、大丈夫。大丈夫だから……ね?」 「ぅあ~~~! ああああぁ~~!」 あああ……泣いちゃった……。 どうしよう……。僕もハルリオくんの感情に感化されて目元が熱く濡れてきた。 そしてポツリと……出た名前…… 「……クライムさまぁ……」 本当にどうしよう。どうやって僕達の存在を……助けを求めれば良いのだろう? どうしようもなくて……二人で泣いていたら、上から布が降ってきた。 突然"バサリ"と掛けられた布を避けて、上を確認すると僕達をここに連れてきたハイブリット・イリーガルが立っていた。 四肢が半透明だから……間違い無いと思う……。 「使え。寝ろ」 「…………」 そう言って布を指差す……。 僕はハルリオくんを抱きながら布を身体に巻いた。 少し離れた所に立ったまま、ハイブリット・イリーガルは動かない……。 これから……僕達はどこに連れて行かれるのかな……? 僕にハルリオくんの世話をさせると言っていたけど、それはいつまで? 僕達を解放……してくれなさそうだけど……。 解放されたとしても、数年後……な気がする。 どこかでチャンスを見つけて、逃げなきゃ……。 失敗出来ない……。 でも、失敗を恐れてチャンスを逃したくない……。 「…………」 僕は静かになったハルリオくんを見た。 彼は僕の胸に濡れた頬を寄せて眠っていた。 寝顔だけでも安らかな感じがして、思わず頬が緩んだ。 小さな存在が愛おしい……。 僕はハルリオくんを暗闇の中、強く抱きしめた。 「……………………」 ―非力なオメガだから、気に留めることも無い……。 闇族は僕の事をそう言って去っていった。 そう。その判断は正しいし、そう思っていて欲しい。 確かに僕は非力だけど、出来ないわけじゃない。 何か……出来る事を見つけて、何とかしたい。 僕は髪留めのラインストーンを触りながら瞳を閉じ、一人の人物を思い描いて名前を呟いた。 「―クライム様……」 ……貴方に、もう一度…………抱きしめて欲しい……

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