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第18話 EP1:愛引 それは転がりだす

「みとにゃさんといっしょ、あそぶ! だーじょぶ!」 「ミトナさん、息子がご迷惑を……」 「僕、弟多いんで大丈夫です」 たくさんのオメガに囲まれて笑う、まだバース性が出ていない活発な少年。 懐かれるのが好きな僕としては、純粋に嬉しい。 「ハルリオくんは、僕と遊んでくれるの?」 「うん! あそぶの!」 「そっか。宜しくね」 「ん!」 元気が良くて可愛い。 弟達を思い出してしまう……まぁ、僕の弟達はこんなに活発では無かったけど。 ボール遊びが好きなのか、柔らかい素材の大きなボールを抱えてニコニコしている。 「ウチの息子は綺麗どころに囲まれてデレデレだな」 そう言いながら威厳ある人物が現れた。この第三騎士団の団長様である。 団長様は奥様と一人息子のハルリオくんを伴って、遅れてこの視察地に到着した。 そんな団長様の奥様は本当に線の細い、儚いオメガ美人さんで……"運命"なのだそうだ。 二人とも方向性が違う美しい人で、僕は奥様の腰に手を置いて引き寄せて立つ団長様のツーショットに憧れの溜息が出た……。 だって、美しいんだ……。僕以外の施設のオメガ仲間も同じ反応をしている。 そんな僕の横に立つハルリオくんに視線を落とした団長様は、今度は"ニヤリ"とした男くさい笑みを浮かべた。 「お? ハルリオは随分と綺麗な子を捕まえたな。さすが俺の息子だな!」 「…………」 「何でクライムが自慢げなニヤケ顔なの……髪の毛切って表情が分かる分、怖い」 「失礼な奴だな、ゼク!」 親しげにゼク様と話すクライム様……。 クライム様を見ていると、だんだん気持ちがゆったりとして……同時に身体に熱が溜まる。 そして僕の鼻がクライム様の"匂い"と捕らえると、もう駄目だ……。瞳が潤んでくる……。 「……ミトナ、少し"薬"の事で話が」 「はい……」 クライム様はそんな僕の手を掴み、部屋を出て人気の無い場所へと少し歩いたかと思ったら、突然立ち止まり…… 「―……ミトナといると心地良いな……。こんな安らぐのは初めてだ……。 薬の話は……こうしたかった俺の口実だ……」 「クライム様……」 「ミトナ……もっと近くに……」 「は、はい……」 そう言って、僕を抱きしめて背中を撫でて来るクライム様……。 正直、僕もクライム様と密着出来て今までに無い位の安らぎを感じているけど、同時に……。 か、身体の……深い奥の方が疼く……。 僕……性欲が強い方だと思って無かったけど、クライム様の前だと駄目だ。 薬役でしかないのに……。 "薬"以外でも触れて欲しいだなんて……。 こんな感情、初めて……。 そうして僅かだが抱き合い、離れたのを見計らったかの様にクライム様はゼク様に呼ばれて行ってしまった……。 お仕事関係だって分かっているけど……残念で堪らない。 そんな気持ちで廊下を歩いていたら、小さな訪問者が僕の前に現れた。 「みーとなしゃ、あッそぼ!」 自分の頭より大きいボールを抱えた、笑顔全開のハルリオくんだ。 そこで僕はハルリオくんの誘いを受け、施設の外に出てボールで遊ぶことにした。 何てこと無い対面でボールを転がし合う遊びだ。 「あ!」 しかしボールを受け止めそこなったハルリオくんが、そのボールを追って森へ飛び込んでしまった。 僕も慌てて彼の後を追うが、小さいのに身体能力がかなり良いのか彼の背中がとても小さい。 「まってぇ!!」 前方の彼の声に、僕はおかしさを感じた。 転がったボールを拾うだけなら、見た感じハルリオくんなら直ぐ追いつけるだろう……と……。 なのに、彼のボールはどんどん森の奥に転がっている。 不思議に思いながらも、僕も追いかけて……気が付いた。 地面にポツポツとある小さな黒い塊が連携してボールを転がして、ハルリオくんを誘導している、と。 ハルリオくんは夢中過ぎて、ボールに釘付けだ。 僕は走る速度を何とか上げてハルリオくんを追い抜き、ボールを掴んだ。 「ヤッタ!」 思わず歓喜の声を上げた僕に、ハルリオくんでは無い声が掛けられた。 「……邪魔、するなオメガ」 僕は驚き、声の方へ視線を向けた。 すると、そこには…… 「……ハイブリット・イリーガル……?」 僕達の前に現れた人型のそれは、四肢の先が半透明の黒いブヨブヨとした姿をしていた。 非合に闇のアルファと魔物が合わさったその姿は、初めて見る……。 黒い髪は闇族の特徴で……でも、"人"で無いなら、"ハイブリット・イリーガル"に違いない……。 「―……その子は、将来"アルファ"になる」 「え?」 「頂く」 闇族に属する者の言葉の後、彼の手が大きく広がりハルリオくんを覆い攫おうとしてると感じた僕はとっさに彼を抱きこんだ。 「や!? みとにゃしゃっ!!」 「止めろ! やめ――……!」 そして僕はハルリオくんと共に手……ブヨブヨした黒い何かに包まれ、地面の感触が無くなった。 ―……浮いてる? 僕はその事実に驚き、ハルリオくんを一層強く抱いた。 ハルリオくんは僕にしがみ付いて、小さな身体をプルプル震わせてる。 僕もこの状況に恐怖しているが、まだまだ小さな子供のハルリオくんの方が、何十倍も恐怖しているに違いない……。 なのに、震えるだけで悲鳴も無く、僕にしがみ付いて……。 ……非力なオメガの僕を、頼ってくれている。 何とか、逃げなければ……!

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