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prologue
「かえで!おっきくなったらけっこんしようね!」
「うん!ひろ!やくそくだよ!」
小さい頃やくそくしたでしょう?
結婚しようって、
今になって
無理なのはわかったけれど
僕は、それを叶えるためだけに生きてた。
僕には好きな人がいる。
その人とは幼馴染で、家も歩いて2.3分の距離。それなのに僕たちの距離は離れていく一方で、もう2度と関わることがないのかな。なんて、そんなことまで考えてしまうくらいの人だけど。
登校するための電車に乗りこむと、いつも通りの満員。それでも見つけるのは、やっぱり彼の姿。
高校に入ってから1年とちょっと。彼がいつも乗る電車と僕が乗る電車は同じで、これがあるから満員電車だって我慢できる。
けれどひとつ、我慢できないことがある。
それはたまに襲ってくる、痴漢というやつ。一体全体こんなチビメガネの男を触って何が楽しいのかよくわからない…
逃げる場所もないし、大声を出すのも恥ずかしくて、目的地に着くまでいつもこのままになってしまう
けど今日は違った。
「いてっ!」
と言う男の人の声と共に、
僕からその手が離れたから。
「おい…何してんだよおっさん。男子高校生のケツ触って興奮してんのか?」
「いたっ…!う、腕折れる…!」
「こんなんで折れるわけねえだろ。」
「……ひ、尋くん!?」
僕を助けてくれたのは、他の誰でもない、僕の好きな人だ。
「楓。」
「は、はいっ!」
話しかけられた…!
「大丈夫か…?」
「う、うんっ」
「そうか。おっさん、次の駅で降りんぞ。楓も。」
「わ、わかった…!」
この光景に車内はプチパニックで、可哀想…とか、よくやった!だとか、悲鳴にも似た声とか。色んな人の視線がこちらに向いているのに、尋くんは何も感じていないようだった。モテる人はこういうの慣れているんだろうけど…
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