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第9話
「押し返してくんねえと…このまま続けることになるけど」
「んっ…いいよ…?」
「お人好し。」
「ちがっ…んんっ!」
「…メガネ邪魔だな。」
再び合わさった唇の隙間から、押し入るように僕の口内を圧迫する舌が嘘みたいに絡み合って、ぴちゃぴちゃと音を立てる。
吸われたり甘噛みされたりする度に、ビクッと反応してしまう自分の身体が恨めしい。
「はあっ…んっ……ふぅ、んんっ…!」
朦朧とする頭の中、ふと身体が宙に浮いた。
「へっ…?」
それは尋くんにまたしてもお姫様抱っこをされたのだとすぐ分かる。
「ベッド。」
「ああ…」
優しくベッドに降ろされて、彼の手で頭を支えられながら、押し倒されているような体制になった。
「ほんとにこのままするけど」
「うん…」
「…嫌になったら突き飛ばせよ。」
「ふふっ、うん、わかった」
ちゅっ、ちゅっと、それは僕に降り注ぐ。
この人が僕のことを好きなんじゃないかと思えるくらい、そりゃもう優しくキスされて、あっという間に蕩けてしまう。
外は夕暮れ時だろうか、茜色の光が尋くんの横顔に当たってとても綺麗だ。僕も同じ色なんだろうか、と嬉しくなって自然と口角が上がってしまう。
「なに?」
「うれしくて…」
そう言うと、「ふっ」と笑った彼の顔は柔らかくて、胸がきゅ〜っとなった。
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