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第8話

「…なに突っ立ってんの」 「あっ…ごめんっ」 持ってきたお盆をローテーブルの上に置いて床に座った彼は、隣の床をぽんぽん叩いた。 隣に来いって事かな… 「失礼しまぁす…」 「ん。」 「…この部屋、なんにも変わってないんだね…」 「まあな。」 「……」 どうしよう、勢いで来ちゃったけど、何を話そう… 「なあ」 「うん?」 「お前のことそんなにした奴誰」 「えっ……わ、分からない、かも」 「は?」 「あ、こないだ尋くんの周りに居た子達かな…?」 あんまりその光景を見たくなくて、顔とか名前とか覚えないようにしてたんだよね… 「ふうん…」 「どうして?」 「おんなじことやり返してやろうかなって」 「やっ!いいよそんなの!」 「さすがにやんねえよ」 「そ、そっか…だよね…」 「まあ俺はもうそいつらとは関わんねえけど、兄貴に言やあどうにかなんだろ」 「うん…」 あの子たち尋くんから無視されたらどうなっちゃうんだろう… 「楓は思わねえの」 「へ?何が?」 「やり返してえとか。」 「う〜ん、一応女の子だし…ね」 「お人好し…」 「そんなことないよ」 「変わんねえな。」 「尋くんだって…」 「嘘だ、変わっただろ」 「どこが…?」 「…見た目とか」 「うーん、確かに可愛らしさはあんまりないけど、色素の薄そうな髪とか、笑うと優しそうなとことか、あんまり変わってないよ」 「へえ…」 「あ!でも昔より、かっこよさが倍増したよね!ふふっ、本当の王子様みたいだよ。」 「……楓。」 ちゅう 「…んっ」 また、キス…?どうして…? 「なんで嫌がんねえの」 「それはっ…嫌じゃ、ないから…」 「っ…」 「…んっふ…っ」 角度を変えて何度も交わる唇。 息が持たないくらいの長い間、それは繰り返された。

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