15 / 15

epilogue

正直、楓以外を好きになったことはない。 だから、電車であいつを触った気持ちの悪いクソジジイも、あいつを囲んで虐めた頭の悪いクソビッチ共も、全部、本気で殺してやりたいと思った。 やり返してえ。と言ったのは本心だった 楓が望まないからそうしないだけで、 やれと言われれば迷わず俺はやるだろう 馴れ馴れしい兄貴にでさえ、 少しイラッとする。 触るな、見るな、俺のなのに。 告白する勇気もない奴がよく言えたもんだが。 抱き合っている最中、好きだと言われたのは予想外で、一瞬俺の妄想かとも思った。 あいつは隠したがるけど、あの大きくてくりくりですこし垂れた目は、誰が見てもかわいいと思うものだし、それに気づかない楓を少し不憫だと思っていた時もあったけど、もし、楓がそれに気づいていて、周りもそのかわいさに気づいていたなら、悪いオオカミ共に何をされていたかわからない。 それならそうなる前に俺が、俺の手で、楓を抱きたかった。 幼稚園の時の劇で楓をお姫様役にしたのも、先に好きになったのも、結婚しようと言い出したのも、部屋に連れ込んであれこれしようとするのも、迷惑掛けるのだって、全部俺なのに。 あいつは全てを受け止めようとするから… ちっちゃくて細っちいあの身体で、俺を必死に受け入れようとするから、だから、どうしたって可愛くて、恋しくて、愛したいと思う。 何度だってやくそくするよ。 俺をこんな気持ちにさせるのは 楓だけだから。

ともだちにシェアしよう!