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第14話

「楓。」 「うん…?」 1度身体が離れて、 にこりと笑う彼と目が合う。 すると再び顔が近づいてきて、 僕はゆっくりと目を閉じた。 ちゅっ 唇に一瞬のあたたかさ 手を伸ばして、薄茶色の髪に触れる。 どうして今まで気づかなかったんだろう。 伸ばせば触れられる、 そんな距離に居たはずなのに。 想いも身体も繋がって、 こんなに幸せで良いんだろうか… 尋がもぞもぞと動き出したと思ったら、僕を抱きしめたまま、上から布団をかけた。 「?」 「しばらくこうしてたい。」 「うっ、うんっ、わかった」 さっきまで行為に夢中で、恥ずかしいとか気にしてなかった…いま僕たち裸なんだよね… 身長差のせいで、僕の顔は尋の胸の辺り。 心臓の音がはっきり聞こえてくる。 あ、僕と同じくらい速い…嬉しいっ… 「なあ…」 「うん?」 「こんなに近えのに、まだ遠い?」 「う、ううん!!近いよ、すっごく近い!」 こないだの気にしてくれてたの…? 「…ずっと、好きだった。」 「!」 「幼稚園の時も、本気で好きだった。」 「ぼ、僕もだよ。」 「…後悔してたんだ、お前が離れた時に追いかけなかったこと。」 「それは…」 「どっかで自惚れてたんだろうな、戻ってくるような気がしてた。」 「ごめん…」 「別にいい、理由なんとなくわかったし。」 「そっか…」 「俺こそ、楓がまたどっか行きそうな気がして、焦ってこんなことになってるし…」 「ううん…こうなれたことは、嬉しいよ」 「ほんとかよ…」 「ほんとのほんと!」 「そう言ってくれるんだったら、もうどっか行くなよ…」 「…うん、行かない、ずっと尋のとこに居る。」 「ん。」 「でもね、尋はモテるでしょう?」 「そんなに。」 「嘘はだめです!モテるの!」 「んー、あー、モテなくはない…かも。」 「うん、だからね?僕も不安だよ?」 「?…なんで」 「近づいてくる人が多いから、その中の誰かに盗られちゃうかもしれないでしょ…」 「そんなわけ…」 「でも尋、こういう…えっちなの、初めてじゃないでしょう?わかるもん。」 「え。」 「手慣れてる…」 「あ、ああ…」 「むむっ」 「怒ってんの…?」 「怒ってはない…」 「怒っては…?」 「ずるいなって。」 「…俺?」 「ちがう、尋の初めての人。」 「…」 「僕が良かった…」 「なんだそれ」 「え?ごめんっ…」 「かわいすぎんだろ…」 「ええ!?」 「そんなこと言われると思ってなかったから、初めてとか…対して覚えてもねえし…」 「そうなの?」 「流されただけだしな…あとはまあ、そういう年頃だし。」 「そっ、か…」 嫌だな…想像したくない。 誰かとそういう行為をしたって思うだけで、過去のことなのに、すごく胸が苦しくなる。 「もうしないから…楓が傍に居てくれるなら、楓が良いよ、俺は。」 「!…ずっと傍にいるよ」 「…やくそくな。」 「うん、やくそくだよ。大好き。」 この気持ちがちゃんと伝わるように、腕に力を込めた 「楓、こっち向いて」 「ん?」 ちゅっ ちゅっ 「!?…んっ…んんっ…」 何度も何度も、啄ばむようキス 息を吸う間もなく、優しく口づけされる さっきまでの感覚が蘇ってきて、 あっという間に引き戻されてしまう 身体が熱くて、触ってほしいと思う。 もっとしてって。 それでもキスはずっと優しくて、 リップ音だけが響く。 「んふっ…あ…はあっ…」 やっと離れた唇。 それでもこちらを見つめる瞳は熱くて ああ、男の人なんだ。と思い知らさせる。 「楓、好きだ。」 「っ…!」 心臓を射抜かれたのかと思うほど、どっと血液が流れ出した気がして、返す言葉もでない そんな僕を見て優しく微笑む彼を、 とても愛しく思った。

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