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第2話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー どういうことだどういうことだどういうことだああぁっ! 俺は不運なことにモブ姦BLの世界のモブに転生し、リア充爆発野郎(不破時雨)を犯すはずだ。間違っても俺が掘られる側ではないはずだ。 なのにたった今、俺はそのリア充爆発野郎に押し倒されているのだ。 (くそっ……! こいつ、見かけによらず馬鹿力だ……! ) 捕らえられた手首を動かそうと奮闘するが、ビクともしない。 「お前、舐め方下手だよね。でも小犬みたいで可愛いかった。すごく」 「な……ッ! 小犬……!?」 「俺、お手本見せてやる。見てろ」 そしてリア充爆発野郎は素晴らしい手際の良さで俺のシャツを全開にし、その指先で、ひたと乳首に触れた。 「ん……ッ!」 (な、なんだこの声……) 図らずも高く甘えたような声が出てしまった。 「ああ、お前、なんて可愛い声を出すの……!」 「可愛くねえっ! どけ! 今すぐどけ! 俺がお前を犯すはずだろ!?」 掘られるかもしれない恐怖に、威勢よく怒鳴るつもりが芯の無い震え声になってしまう。 「ダメ。ワルイことをしようとしたんだから、罰を与えないと。 ちょっと恥ずかしくても、我慢しろ?」 こてんと首を傾けながらそう言って、乳首を指でくりくりと愛撫してきた。 「ん……ふ……っ」 抑えようとしても、小さい声が口からこぼれてしまう。 (乳首なんか……気持ちいいはずないのに……! なんか、むずむずする……! なんだこの感覚……) 「ふあ……!」 列記とした喘ぎが漏れてしまった。リア充爆発野郎はそれに急き立てられたように乳首を舐めだした。 (まずい、まずい、まずい! このままだと完全に掘られる……! どうすれば止められるんだ……) そこで、ハッと思い出した。 (そうだ、あのBL漫画では、こいつノンケだった! 真正のホモじゃないなら、ソコを見れば沸いた頭もさすがに冷めるだろ……!) 局部を見られれば犯されホモルートは回避できるはずだ……! 藁をもすがる思いでそう信じ込んだ。 (それまでは我慢だ。耐えろ、俺……! 頑張れ、俺……!) 目を瞑って乳首責めに耐えていると、ようやくそこから顔が離れた。 「……胸ではこれ以上は感じない? まあ、お前は初めてなんだから仕方ないね。これから開発しなきゃ……」 「な、なんで初めてだって知って……」 「見れば分かる。こんなにもふるふる震えてて、手練だと思う方がおかしい。女性経験もないんだよね?」 「……っ!」 「図星、って感じ」 そう言ってふっと笑いやがった。 (こいつ……! モテるからって馬鹿にしやがって……!) 童貞だと馬鹿にされた。それも年下の男に! 屈辱と羞恥がない交ぜになってこみ上げて、顔がかあっと熱くなる。 「わ、笑うな! 童貞で何が悪い!」 「違う。馬鹿にしてない。可愛いなと思っただけ」 さっきからこいつは何を言っているんだ。俺が可愛い? 26歳にもなって童貞で平凡でモブな俺が? モテすぎて女は飽きたってか? (大体、俺が童貞なのはこいつのせいでもあるのに、よくもそんなことを言えるな……! くそ、馬鹿にしやがって……!) 大学二年生悲劇の朝、こいつを犯して警察につかまる運命かもしれないと気づいてから、死刑判決を待つ囚人のように生きてきた。到底恋愛などできるような気力は持ちあわせていなかったのだ。何も知らずのうのうと生きてきたこいつと違って! (ああ、ますます腹が立ってきた……!) そうだ。それに警察に捕まるくらいならボコボコにされたほうがマシだとは思ったが、犯された方がマシとは微塵も思っていない! (絶対に許さない! お前なんか……!) (お前なんか、嫌味ガチホモ野郎に格下げだっ!!)

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