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第36話 Clover's March 『汚濁の大花 -信仰-』 -4E-
『ハスティ』
これは、"蓮"の花からとったものだ。少年の白い肌から、そう浮かんで来たのだ。
森で拾った、宝石のアルハーム。
市で買った、白蓮のハスティ
ライオンの獣人の、美しいアルハームは攻め手としか考えられない。
森で彼を発見した時から、この考えと方針は変わらない。
彼が望まない限り、誰も彼を"犯してはならない"。
"王様"はそう易々と、誰かに従う素振りを見せてはいけないのだ。
その為に大事に磨き上げ、アルハームという、宝石を身に着けたいと相手から常に渇望される……。
そう心酔させる様に、ずっと手の届かない雲上の存在としてあの箱庭に君臨させたのだ。
そしてマイクロブタのハスティは、その小さな身体は皆から愛を与えられるべきだ。
今から生きる泥水の様な濁った世界で様々な愛を受け、その水を吸い、濁水であればあるほど大輪を咲かせる蓮の花の様になるのだ。
汚濁の中で清らかさを覗かせ、美しく可憐に……儚く大きく咲く。
その中で、ハスティは花弁を誰かに毟り散らされ、そうなりながら誰かをそっと救い、その姿を誰かに見初められ、本人も救われるだろう……。
手始めに、恐らくワシが大枚をはたいた奴隷少年、として興味が湧いている客が寄ってくる。
そして今後……二人が誰か唯一を決めるなら、それはそれで……仕方ない。
むしろワシはそれも望んでいる。
……老犬は死に往くだけだからな。
―……ああ……そんなアルハームとハスティのステージは、想像するだけで最高のものになると分かる……
ワシは細く頼りないハスティの薄い肩を片手で抱き寄せ、口ひげを僅かに上げてほくそ笑んだ。
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