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好きが止まりません 5話
シャワーを浴び、平常心を取り戻す西島。
碧が眠ってくれて良かった。
襲うからじゃなく、泊める口実になったから。
帰したくないな。なんてチラリと考えたのだ。
でも、どう切り出して良いか分からずにいたら、碧が眠ってしまった。
まあ、碧は狸寝入りだとは西島は知らない。
パジャマとか、買ってた方がいいかな?
あんな風に寝てしまったら着替えとかね。
歯ブラシも客用じゃなく、ちゃんとしたやつが‥‥‥‥‥‥
って!俺は何を考えているんだあああぁぁぁ!
ずっと、そ、それもいいけどさ‥‥‥
やましくないからなあ!
心で絶叫してシャワーを修行僧のように浴びる西島であった。
◆◆◆◆◆
シーツの中で諭吉と戯れていた碧だが、諭吉がシーツから外へと出てしまい、
「諭吉」
と、シーツから自分も顔を出す。
バッチリと西島と目が合った。
‥‥‥‥‥!!
部長、‥‥‥やばい、部長に狸寝入りバレちゃう!
嘘ついてしまった罪悪感が心にポコンと浮き上がり、ドキドキする碧。
「良かった、起きたんだ」
西島の言葉に碧は更にドキドキが増す。
起きて良かったって言うのは帰せるからかな?
やっぱり泊まるのは図々しいのかな?
碧は一気にションボリとなる。
「風呂に」
えっ?いま、なんて?お風呂?
西島が次に放った言葉は風呂。
良く見たら西島は風呂上がりのようで、髪が濡れていた。
「また、俺の、あっ、私の下着で悪いな。新しいのだからさ着替え置いているから入って来なさい。朝から入るよりいいだろ?」
どうやら西島は自分をお風呂に入れたいのかな?と、理解し、西島をじっと、見つめる。
泊まっていいんですか?
着替え貸してくれるって事はそうですよね?
「お風呂‥‥‥」
「そう、風呂‥」
風呂と言ったまま、西島を見つめる碧。
ど、どうした佐藤?
なんで、じっと、俺を見ているんだ?
‥‥‥‥‥‥しばし考えて、思い出す。
一緒にお風呂に入る約束をした事を!
ああぁぁ!そうだった!
風呂に入る約束をしていたんだ!
先に入ってしまった!
嘘つきと思っているのか佐藤‥‥‥‥
勘違いな思いをくみ取った西島も碧を見つめる。
「あ、あの、お風呂入ってきます!」
碧はベッドから起き上がると西島の横を通り抜けた。
さ、佐藤‥‥‥元気無かったよな?
お、怒っているのか?
約束をしたもんな?
もう一回入ってもいいかな?
うーん‥‥‥‥‥‥‥よし!そうしよう!
決心を固め西島は風呂場へと向かう。
◆◆◆◆◆◆
良かった。泊まっていいんだ!
碧は嬉しくって、鼻歌を歌い出す勢いで風呂場にいた。
シャワーで身体を流していると、人の気配。
「佐藤」
すりガラスの向こうに西島の姿。
「部長?」
どうしたんだろう?あ、タオルとかかな?
なんて軽く考えていると、
「一緒に風呂入ろう。ごめんな、約束をしていたのに先に入ってさ‥‥‥」
と言われた。
えええぇぇぇ!
一気に心拍数が上がる碧。
部長とお風呂おおぉぉぉーっ!
そ、そうだ!一緒に入る約束をしていたんだ!
部長、覚えててくれたんだなあ。
って、喜んでいる場合じゃない!
碧はタオルの何もつけていない、慌てて湯船に入ると、
「ぶ、部長、あ、あの、本当に一緒に入ってくれるんですか?」
とすりガラスの向こうの西島に声をかける。
「あぁ、約束したもんな。背中流してくれるんだろ?」
うん、した!約束した!
「は、はい!」
返事を返すと西島が服を全部脱いでいるような気配。
きゃー、ぶ、部長のはだ、はだか!
ど、どうしよう!
碧がドキドキしている間に西島は服を全部脱いで、タオルを巻いて浴室のドアを開けた。
わああぁぁー、部長が裸で後に!
碧は恥しさで後を向いたままだ。
い、勢いで風呂に来たけど、ぶっちゃけ、こっ恥ずかしい!
佐藤もこっち向かないし、
まあ、向かれても恥ずかしいからいいんだけど。
しかし、背中、流すって佐藤は言ったけど、‥‥‥‥‥‥‥沈黙なんだけどなあ。
碧はドキドキしたまま声をかける事が出来ないでいた。
互いにどうしよう?と悩んでいる。
そして、意を決した碧が、西島の方を振り向く。
部長、背中流します!
そう、言うはずだった。
でも、目の前には西島の裸。
もちろんタオルは巻いてはいるが、碧だって、男の子だから、つい、ね……
下に注目してしまい、慌てて顔を伏せた。
ぼ、僕のエッチ!どこ見てんの!
「佐藤、顔上げろ」
西島が慌てたように碧の名前を呼ぶ。
えっ、ぶ、部長、顔は上げれません!恥ずかしいです。
なんて、とまどっていると、
「佐藤、鼻血!もう、風呂から出よう」
へ?鼻血?
碧の頭に沢山のクエスチョンマークが浮ぶが、バスタブの縁に赤いものが‥‥‥‥‥
!!!
わああぁぁー!鼻血ーっ!
ポタポタと血がお湯に落ちては交わっている。
「待ってろ」
西島は一旦、浴室を出て、テッシュを箱ごと持って来た。
もちろん、タオルも持ってきており、
「佐藤、テッシュで押さえてろよ」
と指示すると、迷いもせずに碧を抱き上げた。
◆◆◆◆◆◆
「すみません」
ションボリとして碧はソファーに座っている。
また、部長に迷惑かけちゃった。
呆れたよね?
泣きそう。
落ち込む碧の頭に西島の手が触れて、
「佐藤、ごめんな。のぼせやすいの忘れてた」
優しく撫でられた。
部長‥‥‥‥
碧が迷惑かけているのに西島は自分が悪いと謝る。
なんで、こんなに優しいのだろうか?
「部長は悪くないです!」
そう口にすると、自分の不甲斐なさが浮き彫りになり、本当に泣きそうになる。
「僕、部長が優しいから何か役に立ちたいと思っているのに迷惑ばかりで、ごめんなさい」
本当にごめんなさい。
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