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初めてのチュウは部長がいいです
ああぁぁ!もう!
自分がしてしまった事の後悔で西島はリビングで悶えている。
泣き顔可愛かったんだもん!
泣きながら寝るのが可愛かったんだもん!
寝顔も可愛かったんだもん!
西島は碧に承諾も得ずにチュウしてしまった事をグダグダ悩んでいた。
子供に!
なんて言い聞かせても碧を好きな気持ちは増すばかり。
「なん悶えよるとや?」
諭吉がリビングへやって来た。
「べ、別に」
「碧にチュウした事や?」
「‥‥‥‥‥み、見てたんなら聞くな」
猫にチュウを目撃され、挙句につっ込みを受ける自分が情けない。
「チュウっていうても、オデコとかやん!口に何でせんとか?」
「出来るか!」
「この、根性なしがー!」
「な、な、猫に根性なしとか言われたくない!」
「ニッシーはよか男やのに、尻込みばっかしよる。碧みたいな恋の経験がなか子には大人のニッシーがリードせんばダメやろが!この、ばかちんが!」
西島は思った。
なんで猫に説教をされ、リードしろとか言われているのだろうと?
「碧も可愛い努力ばしよるとぞ」
「は?努力?」
「帰りたくないけんが、寝た振りとか、可愛かやろうが!そいとにニッシーは手もださん!」
寝た振り?いつ?
えっ、まさか、さっきの‥‥‥起きて?
うわああぁ!
佐藤、寝た振り?だったのか?き、キスとか!
うわわっ!
西島はパニック寸前。
でも、
「安心せい!あれは本気で寝てたばい。寝た振りはテレビ見てた時。泊まりたいって、口で言えんけんが、行動に移したと、まだ碧が積極的やん、負けたなニッシー」
これは勝ち負けか?
なんて、突っ込みを入れたかった。
佐藤が寝た振り。
帰りたくないから?
嘘?本当に?
「諭吉、からかってないよな?」
「なし、からかうや?」
「そうか‥‥‥」
本当に佐藤は帰りたくないって思っていてくれてたのか?
部長、好きです。
碧が口走った言葉を頭でリピートさせた。
佐藤、俺を好きなのか?
ど、どうしよう!嬉しい!
顔が熱い。
「ニッシーもさ、案外純なんやな。2人とも中学生みたいばい」
諭吉はため息をつく。
この、調子じゃ碧の恋愛成就は時間がかかる。
ワシがなんとかせんばいかん!
◆◆◆◆◆◆◆
「西島、なんかキモい」
神林が癒やそうな顔をして西島をみている。
昼休み前、西島は神林の所でサボりっていた。
「何が?」
「いつもは眉間にシワ寄せているお前がここに来てニヤニヤ。気持ち悪い」
神林に言われて、両手で頬の緩みを直すようにマッサージを始める。
その、行動も気持ち悪いと神林は癒やそうな顔を再度向ける。
碧が自分を好きじゃないかと自覚してしまい、顔が緩んでしまっているのだ。
今朝も一緒に出勤した。
朝から碧は元気がなく、昨夜、迷惑掛けたと謝ってきた。
迷惑掛けたお詫びに今夜は碧が食事を作ると言い出して、
今夜、誘う手間が省けたとニヤニヤした西島だったのだ。
「碧ちゃんと何かあったんだろ?聞いてやるよ」
「えっ?べ、別に何も」
あからさまな動揺に神林は笑いを必死に堪えている。
「話したいんだろ?そう顔に書いてあるぞ!」
西島はいつもこんな感じだ。
話したいからここに来たんだろとバレているのに、素直に話さない。
言わせるように仕向けなければならない。
結構、面倒くさい男なのだ。
神林に問い詰められ、
「佐々木には言うなよ」
と前置きをして、話始める。
初めから素直に話せばいいのに‥‥‥
そう思いながら神林は話を聞く。
「佐藤は俺を好きらしい‥‥‥‥」
うん?いまさら?
えっ?あんなにあからさまに態度に出しているのに、今更?
「で、俺も‥‥‥‥あの、変な目でみるなよ?俺も、佐藤が可愛いって、思うっていうか、その‥‥‥」
そう言って西島はモゴモゴと口は動かすが言葉にはしない。
あああぁ、もうー!この男は!
「好きなんだろ?碧ちゃんが」
中々言わない西島にイラッとしたかんはサラリと言葉にした。
「な、な、な、なんで!」
あ、すんごい動揺した!
動揺する西島は新鮮だ。
神林は笑いがこみ上げて来ている。
面白い!
「好きなんだろ?」
再度聞かれ、西島は顔を真っ赤にして頷く。
千尋!やっぱり、お前最高!
神林は物凄く笑いたいのを堪える。
いや、マジでなんだコイツー!可愛い!
普段は仕事をバリバリこなし、怖いものなしの西島部長。
上司も西島を怖がったり、なのに、女子社員の人気は不動。そんな西島が年端もいかない可愛い男の子を好きになり、顔を真っ赤にして俯いているじゃないか!
いいもの見た!
つーか、気付かれていないと思っているのもツボる。
「良いんじゃない?碧ちゃん可愛いし、良い子だしさ、何よりも、お前が誰かに興味持てた事が俺は感動している」
神林は西島の肩に手を置く。
「な、なんだよソレ!」
「いや、お前はさ、誰にも興味有りませんみたいな顔しているからさ、俺は心配してたんだぞ?」
「神林‥‥‥」
神林がこんな風に思ってくれていた事に西島はちょっと、感動した。
「顔もイケてんのにつまんねえ人生送ってんなあってさ」
それなのに、最後につけられた言葉で、西島は神林の言葉を撤回してやった。
「神林、てめえ!俺はつまんなくない!」
「はいはい、そうですね。」
神林は軽く交わす。
「このまま、恋人作らなかったらさ、俺が嫁に貰ってやろうかとも思ったんだかどな。」
「は?」
西島は目を丸くして神林を見る。
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