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気持ちいい事しません?13話

◆◆◆◆ 「なんだ?知らなかったのか?」 神林は西島にコーヒーを渡す。 「お前は知ってたのか?」 資料室へ行った帰りに神林の所へ寄り道をして朝の話を愚痴っていた。碧とセットになってる斉藤にも嫉妬しちゃうし、トリオにまでなっている。 「最近、有名だぞ?まあ、良い事だろ?お前怖がられてたから」 「人を野生動物みたいに言いやがって」 「いい傾向だと思うよ?千尋、本当は凄く面白くて、優しくて気が利いて……会社の人達が思っているのとは全然違うって気付いて貰えるし」 「はあ?褒めても何も出ないぞ?それに……面倒臭いそういうの……」 西島の人見知り部分が顔を出す。本当にこれが無ければ…… 「それにさ、愛想も優しさも色んな事も特定な相手だけでいい、俺はそんなに器用じゃないから」 「碧ちゃん?」 神林はクスクスと笑う。ここも西島らしいと思う。 「うん……碧。……それと、お前とか」 はい?っと思った。今、何を言ったんだ?コイツ。 「神林とかずっと、友達で居てくれるだろ?それで充分なんだ……不器用だから沢山愛せない。特定の人が居ればそれでいい」 西島は穏やかな表情で言葉にした。こんな表情でこんな事を言えるのか?って初めて知った。 「何で黙ってんだよ?えっ?神林は俺の事友達だと思って無かったとか?」 照れたような、焦ったよな……そして、拗ねたような、表情。こんな風にコロコロと表情を変えれたっけ?学生時代は無表情というか、なんというか……社会人になっても無表情は変わらなかったのに。 千尋!!お前凄いな、やっぱ!!なんか、子供の成長を見てるというか、うん!!凄く嬉しい。 「千尋、お兄ちゃんは嬉しいよ!素直に育ってくれて」 神林は思わず西島の頭を撫でた。 「なんだそれ!!誰がお兄ちゃんだ!!」 ムッとして、神林の手を弾く西島。少し耳が赤いのに気付いた。 少しの変化に気づくと、他の変化にも気付くんだなって、思った。耳が赤い……本当、可愛いな、千尋。 もっと、頭を撫でようかとしていたら、「ちぃーす!!」と斉藤が顔を出した。 「斉藤?えっ?もう昼か?」 西島は慌てて時計を見る。 「あ、違います……薬、欲しくて頭痛薬」 「大丈夫?こっちに来て」 神林は斉藤を手招きし、椅子に座らせた。 「熱計って」 体温計を渡す。 「多分、微熱っす!薬だけでいいんですけど」 「ダメだよ、斉藤くんみたいな子はね、大丈夫じゃなくても、大丈夫って言っちゃうの!ほら、熱計りなさい!」 神林は無理矢理、脇の下に体温計を突っ込む。 「お前、早退するか?」 一応、心配そうに声をかける西島。 「大丈夫です……帰っても1人だし、兄が夕方迎えに来てくれるから、それまでは頑張ります」 「お兄さんの所に今夜も……あ、佐々木は出張だったな」 西島は佐々木が居ない事を思い出す。 「斉藤くん、お兄さん早めに迎えに来れる?」 「えっ?どうしてですか?」 「頑張りますって……それは、体調不良の子が口にする言葉だよ?」 「へ?意味わかんないですよ?頑張れるから頑張りますって」 「ばーか、頑張れそうにないから、頑張りますって言うんだろーが!この、意地っ張りが!」 西島は斉藤の脇の下から体温計を取る。 「お前、帰れ」 斉藤にそう言って体温計を神林に渡す。 「あらら~38度越え微熱どころじゃないね」 「でも、碧とランチ」 「ランチは病人食だ!」 そう言ってる時にドアが開いた。 「星夜くん、大丈夫ですか?」 と碧が顔を覗かせた。 「碧、斉藤は早退する」 「え?大丈夫ですか!!」 西島の言葉に心配そうに側に来た碧。 「大丈夫だよ……俺、ここで寝てても?」 「だーめ!!」 神林に怒られる斉藤。 「だって、一人になりたくない」 そう言って俯く斉藤。 「色々考えちゃうもん」 「何を?」 西島が聞く。 「ゆうちゃん……」 ボソッと名前を呟く。 「えっ?佐々木部長と喧嘩したの?」 心配そうな碧。 「喧嘩はしてない。明け方近くまでエッチしたし」 「碧!!聞くんじゃない!」 西島は慌てて碧の耳を手のひらで塞ぐ。 「熱上がったのは自業自得だ!あほ!!」 西島は呆れたように言う。

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