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にゃんこ♪
……、さとう。
……さとう。こら、……
「佐藤聞いてるのか!」
大きな声にハッとなり、顔を上げると、目を釣り上げて怒っている上司が居た。
まさか聞いてませんでした。なんて素直に返す事も出来ずに、
「はい」
と小さく返事をした。
その返事に、
「もういい。戻れ」
と露骨にため息をつかれた。
「はい」
そう返事をして自分の席に戻ったのは今年入社したばかりの新入社員の佐藤碧。
露骨にため息をついたのは西島部長。
部長といっても禿でデブの中年オッサンとかではなく、年齢不詳な顔つきのイケメンだから質が悪い。
多少、欠点があってくれた方が周りのスタッフのフォローが入るから。
特に碧は今年入社した中で一番彼に叱られている。
初めは皆、
大丈夫?とか、
あんなに怒らなくても良いのにね、とか、
それなりに声をかけて慰めてくれたのに…
今は、またか。なんて感じな空気。
碧は席につくと部長をじぃ~と見つめた。
僕、怒られてばかりだなあ。
なんて、飽きもせずに碧は落ち込む。
僕だけ高卒だもんなあ。
碧のコンプレックスの1つ。
新入社員で高卒は碧だけ。
高卒でも社員で採ってくれる会社なんだから頑張らないと……って意気込んでいるのに空回り。
あああ、都会に負けそう。
そして、落ち込む度に毎回、携帯の写メを見て元気づける。
碧が実家で飼っている猫の諭吉の写真。
ーーゆきっつぁん、都会に負けそうだよ。ーーー
なんて、心で弱音を吐く。
****
「また怒ってたな、あおいちゃんを」
昼休み、社員食堂でうどんを食べる西島の向かい側の席に座る人事部の部長の佐々木。
「どっから覗いてたんだよ?部署違うだろーがっ」
不機嫌そうに返事を返す。
「またお前があおいちゃんをイジメてないか心配でさ」
「イジメてない。……っていうか佐藤は男だぞ?毎回、毎回、あおいちゃん、あおいちゃんって」
佐々木は碧が入社した日から彼を可愛い可愛いと言っていた。
「チンコ付いてるの知ってるよ、この前、トイレで一緒になってさバレないようにちら見したから」
ブッ、
危うくうどんを佐々木に吹き出す所だった。いや、ぶっかければ良かったかな?
「変態」
色々、突っ込みを入れたかったが漢字2文字を選んだ。
「ありがとう。」
佐々木は余裕で嫌みを返す。
「入社した中で一番可愛いよー佐藤碧ちゃんは。名前も可愛いし、あおい。ってさ。名字も雰囲気に合った砂糖って…もうさ、砂糖菓子みたいに甘い感じだよね~いいよなあ。俺、スイーツ好きだし」
にやける佐々木に、
「死ね変態」
と愛情を込めて放ち、視線を何気なく食券販売機の方へ向けると話題の碧ちゃんが食券を買おうとしていた。
モソモソと財布を出してお金を数えているようで、
碧は食券は買わず、フラリと売店へ。
そこでお握りを1つだけ購入している。
アイツ、お握りだけで済ませる気か!
なんて見ていると、碧ちゃんは一番隅っこにちょこんと座った。
誰とも話さず、ちょこんと。
碧と同期の若者たちは輪が出来ていて、きっと、そこに入れないのだろう。
大人しい子だし。
*****
社会人の財布じゃないだろ!
250円とか!
碧は食券を買おうと財布を見たら250円しか無かったのだ。
給料日まであとちょっと。
明日は自分でお握り作ろうと決心した時に目の前にサンドイッチが現れた。
へ?魔法?
なんてあるわけもなく顔を上げると、西島が居た。
ーー!!
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