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ニッシーと諭吉8話

心臓の音が西島にも聞こえるんじゃないかって心配するくらいに心臓がドクンドクンと大きく脈打つ。 そんな碧のドキドキに気付かずに西島は碧の頭を撫でる。 小さくて華奢な碧を見ていると、かなり心配してしまう。 熱が高いから大丈夫かな?って。 自分は少々の熱なら平気だ。 こんな風に苦しそうな顔されたら心配してしまう。 でも、実際は苦しそうなではなくて、ドキドキしているだけなのだが、西島はもちろん知らない。 薬は使ったばかりだから、まだ使えないし。 しかも、座薬とか……碧のぷりぷりなお尻を思い出して西島はぎゃーと頭を振る。 佐々木の仲間じゃないし、ショタじゃない! 俺は違う! 思い直して碧から離れようとした瞬間に、 諭吉が西島の首辺りに飛び乗り、バランスを崩して碧の上にまた乗ってしまった。 西島の体重がかかり、碧は驚いて目を開けた。 自分の顔近くに西島の顔が………、慌てて西島が身体を起こすと碧と目が合った。 間近で見つめ合う二人。 部長………カッコイい。 佐藤…………可愛い。 互いにそんな事を思っているなんて想像もつかない。 碧の顔が近い。 事故でキスしたのを思い出す。 キスなんて久しぶりにしてなかった。 部長……睫毛長いんだ。 こんなに近くで見たの初めて……… ドキドキする。 どうしよう、ドキドキしてる! たった数秒なのに、長い時間見つめ合っているような感覚を互いに感じていた。 佐藤… 西島は碧の頬に触れ、 「ごめん、大丈夫か?」 と優しい口調で言う。 碧は頷く。 部長の手、おっきい。 西島が自分から離れた瞬間に碧は彼の手を握った。 驚いたように碧を見る西島に、 「部長の手……おっきいですね」 と言った。 西島の手を握る碧の手は自分より小さい。 「佐藤が小さいんだよ」 ニコッと微笑まれ碧は凄くうれしくなった。 ずっと、ここに居たいなあ。 「洗濯物置いてくるよ。何か欲しいものは?」 そう聞かれ、 「早く戻って来てください」 とお願いした。 早く戻って来てください… 可愛い事を言われ西島はニヤニヤしそうになる。 分かったとだけ言うと寝室を出た。 碧は西島の後ろ姿を見ながら、 部長の裸……写メしたい!なんて考え、きゃーと顔が赤くなる。 そして、碧は西島が拾っていたモノを脳裏で何気に再生した。 パンツを手にしていて、あれ?あのパンツって………自分のに似ていたような? 碧はダルい身体を起こし、シャツを捲ってみた。 きゃあーっ、 叫びそうになった。 僕のパンツだ! 部長が持っていたのは僕のパンツだ! だって、今、穿いているのは僕のじゃない。 少しブカブカ、 シャツも変わっているし、 えーっ、えーっ、 僕の裸…… ううん、僕の……見られた! 碧は自分のJrを西島に見られたとショックを受け、のた打ち回る。 ***** シャツを羽織っただけの西島は碧がショック受けてるのを知らずに洗濯物を洗濯機にぶち込む。 「何や、しょうもな」 足元からの声。 ん? 下を見ると諭吉。 「人間の発情期の雄は交尾ば何でせんとや?」 ん?んん? いま、話した? それとも猫語を自分が理解出来る? 「ニッシー、発情期やろ?」 諭吉の口がそう動いた。 発情期? 「は?」 「良か匂いがするけん隠くさんでも分かるばい」 あー、俺きっと、仕事のし過ぎだ。 「碧もまだ子供かと思っちょったら良か匂いしだしたけん発情期がきとるばい」 あー、きっと佐藤の風邪が感染ったんだ。 西島は自分の額に手を触る。 「あんたに発情しとるとやけん、ちゃんと責任もてや」 うん? いま、なんて? 「佐藤が発情?」 「そうたい。ニッシーが側に来ると良か匂いば出すとさ」 「匂い?」 質問をして、ハッと気付く。 猫と会話してないか俺? つーか、猫って喋らないだろ! 「あ~いかん、薬飲んで寝よう」 西島は頭を振る。 猫、話さない、絶対! 頭に言い聞かせて寝室に戻る為に歩き出す。

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