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恋って何それ?美味しいの? 3話
どうしよう……
起こしたくないかも。
なんか赤ちゃんというか、 うん、子猫抱いてるみたいだ。
にゃんこ……
また来てね。
って言って…………
はっ?俺ってば、猫が喋るわけないだろ!
うん、ないない!
ない……、 と首を振って視線を向けた方に諭吉がちょこんと座り、こちらを見ている。
じーっと、
ぎゃー、みら、見られてる!
つい、慌ててしまい身体を動かしたせいで碧がズルリと西島の身体から落ちた。
ああ、せっかく!
と慌てて、ハッと気づく。
せっかく? せっかく、何だよ?
今、脳裏に過ぎった正直な気持ちに顔が真っ赤になる。
血液が全部、頭に登ってきたみたいだ。
ちがう!やましくない!
西島は起き上がり、碧をベッドへ戻そうとして固まる。
碧のシャツが捲れている。
しかも下が。
シャツがお腹辺りまで捲れて、下着が露わに。
しかもブカブカだから、上手い具合にズレて、 碧の薄い体毛が嫌でも目に入った。
ぎゃーーっ~
な、なんで!
俺が脱がしたみたいじゃん!
薄いけど毛はちゃんと生え………
あああっ、ちがうちがう!
西島は目眩がするくらいに頭を振り回し、クラクラしながら碧のシャツを下ろそうと手を腰へ。
見ないように下着を掴んだ瞬間。
碧が自分を見ているのに気づいた。
………………………………!!!!!!!!
な、なんだ、この状況。
端からみたら佐藤のパンツ脱がしてるみたいに見えたりする?
するかな?
するよね?
あはは、 もう消えたい!
「こ、これは、その、ちが、ちがうんだ!」
パンツに手をかけたままじゃ誤解も解けない。
慌てて碧から離れた。
西島は何故か俯いて床に正座。
碧がゆっくりと起き上がる気配に息を飲む。
「部長…」
碧に何言われるか心臓がぎゅうぎゅうと締め付けられて、今なら死ねると思った。
でも、
「部長、おはようございます」
と碧も正座をして、そのまま頭を下げた。
へ?
西島……気が抜けた瞬間だった。
「お、おはようございます」
西島も挨拶をした。
碧はニコッと笑うと、コトンとその場でまた眠ってしまった。
ね、寝ぼけてましたか!
西島はホッと息を吐く。
碧は猫みたいに丸くなって眠っている。
なんだかなあ~
西島は碧に振り回されっ放し。
でも、 可愛いから許す!
西島は碧の髪を撫でた。
悶々としていた自分と裏腹、碧は無邪気な寝顔。
俺がどれだけテンパったと……丸くなっている碧の身体を起こし、抱き上げてベッドへ戻す。
そして、額を触ってみる。
まだ熱いが多少は下がっているようだ。
氷枕はとっくにぬるくなっていて、枕を手にキッチンへ向かう。
時間は7時。
休みなのに早起きしてしまったな。
西島の休みは昼頃に起き出して、ゴソゴソと家事をしたりパソコンで猫動画みたり……
リア充は絶滅しろ!と思うくらいに、つまらない休日を過ごしてきた。
「マグロ」
また聞こえた幻聴。
「マグロはもうない」
幻聴に返事するなんて、俺は多分、人生つまらなすぎて頭が腐っているのだろう。
「け、ばりしけとう」
声の主は、軽いフットワークでキッチンへと登ってきた。
「しょんなかけん、違う飯で良か」
あ…………、 俺、末期だ。
猫に文句言われてる。
「さっきチャンスばやったとに、何で交尾せんやった?」
西島固まる。
何を、 この猫はきっとにゃーにゃー鳴いているに違いない。
うん、だから、
交尾せんやった?とか、
これは俺の心の声か?
いんや、違う!
俺は佐々木じゃない!
とりあえず、朝食作ろう。
うん。 あ、猫に餌もあげなきゃ……
「また無視か?ニッシーは童貞か?」
手にした鍋を危うく落としそうになった。
「誰が童貞だよ」
思わず返した。
「やり方しらんとかと思ったけど違うとや?なら、何で交尾せんとや?」
交尾、 この猫は何を言っているんだ?
あ、そうだ、そもそも猫は喋らない。
うん、俺………神林に診て貰おう。
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