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きゅん、ときたら恋ですか?

悶える碧を知らずに西島は洗濯を始める。 洗濯機に自分の洗濯物と碧のシャツと下着を突っ込む。 碧のシャツは自分よりも小さくて、なんだか可愛く見える。 背の高さも体格も違う二人。 何だか久しぶりに自分以外の存在を感じた。 1人暮らしを寂しいと思わないが、何か心が温かいのだ。 洗濯機のスイッチを入れたのと同時にチャイムが鳴った。 まさか……佐々木! 嫌な感じがする! インターフォンに映し出された画像をのぞき込む。 えっ?斉藤? 斉藤の姿が映っている。 何か用事か?とドアを開けた。 「部長おはようございます」 頭を深々下げる斉藤。 「おはよう。こんな朝早くどうした?」 時間は8時半過ぎ、特別な用事がないと来ないじゃないか?と西島は思う。 それよりも斉藤が自分の家を知っているのに驚く。 「碧ちゃんのお見舞いだよ」 佐々木の声。 いつの間にか佐々木が居た。 こいつ、 斉藤にドア開けさせる為に連れて来たな! 佐々木の思惑なんてそんなもんだ。 「部長の部屋に碧が居るって佐々木部長に聞いて」 斉藤の言葉に、やっぱり!と思った西島。 「まあ、立ち話も何だから」 佐々木は西島の有無も聞かずズカズカと中へ。 な、殴りたい! 西島は拳を握る。 「お邪魔します!あ、これお見舞いです」 斉藤は西島に見舞いの品を渡すと中へ。 2人の登場に西島はガッカリしてしまって、 違う違う、と頭を振る。 そうだな、佐藤も俺と居ると緊張しっぱなしだろうしな。 そう自分に言い聞かせて、2人の後を追う。 ***** 「ええ、斉藤くんに佐々木部長!」 何の前触れもなく、いきなり現れた2人に驚く碧。 「西島とじゃ碧ちゃん退屈だろ?あいつ、気が利かないからさ」 佐々木は碧の側に行くと、漫画やらDVDやらをドッサリと置いた。 「碧大丈夫?」 心配そうな斉藤。 「うん、大丈夫。斉藤くんごめんなさい。迷惑とかかけちゃって」 碧は斉藤に頭を下げる。 「えっ?何で謝るんだよ?友達心配するのは当然だろ?」 友達……。 友達だって言った? 「僕と斉藤くん友達でいいの?」 碧は恐る恐る聞いた。 同期でも斉藤は大学卒で碧は高校卒。 年齢も離れている。 碧は同期だとは思っていても、斉藤は自分を相手にしないんじゃないかと思っていて、 だから、友達って言葉に驚いたけど、同時に嬉しくなった。 「えっ?ショック!碧は俺を友達だと思ってなかったんだ?」 聞き方が悪いせいか斉藤は寂しそうな顔をしている。 「ううん、違うの。斉藤くんみたいな大人でカッコイい人が僕を友達と思ってくれてるって思わなくって……ほら、僕だけ高卒だし」 碧のコンプレックス。 大学出てれば良かったかな?ってたまに思ってしまう事。 碧は斉藤に友達って言ってもらえて、少しはコンプレックスが和らいだ気がしてニコッと笑う。 その笑顔が可愛くて斉藤は、 「碧!可愛い!」 とギュッと抱きしめた。 「バカだな~碧ってばそんなの気にしてさ!俺の大学なんてバカ大学だぞ?金の無駄遣いなだけ。碧の方がよっぽど偉い」 「さ、斉藤くん苦しい」 力が入り過ぎて碧は苦しむ。 「はいはいはい、離れて離れて」 佐々木は斉藤を無理やり碧から引き離す。 「ごめん、嬉しくて興奮した」 テヘッと笑う斉藤。 「ありがとう斉藤くん。僕、嬉しい」 友達とか、社会人になっても出来るんだ! 凄く凄く嬉しい! 「うん。だから斉藤くんはやめて他人行儀っぽい。星夜で良いよ」 「おっと~某アニメっぽいんだな斉藤くん」 佐々木はニヤニヤしながら言う。 「はい。うちの親父がそれのファンで」 「なーんか時代の流れ感じちゃうなあ~、俺は母親が石原裕次郎のファンだったから裕次郎なんだよねえ」 そんな2人の会話を聞きながら西島部長の名前って確か可愛い名前だったような。と碧は考える。 「西島部長は確か千尋ですよね?」 斉藤の言葉に碧は、そうだったと頷く。

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