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第14話 板前の恋

 「料理の出来る男はモテるって聞いたけど、どうなの?」  カウンターの向こうで柳刃で刺身を引く男に声をかける。  「いいえ」  表情ひつつ変えずにその男は答えた。短く刈り込んだ髪、染み一つない糊のきいた前掛け。  「いや、その姿見たら惚れちゃうでしょう」  その男はふっと笑う。  「じゃあ、惚れてくれますか?」

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