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卒業式-5
「ずっと気になってたんだ、お前のこと。なんかさ、皆と全然違う独特な雰囲気で、どんなやつなんだろうなって思ってて」
悠人のようなクラスの中心からしたら、すみっこの俺なんて眼中にもないと思ってたのに。
「で、勇気だして話しかけてみたら、なんかすげー話しやすいし面白いし。お前みたいなやつ初めてだったから、なんかそれからもうお前のことばっかり考えてて。必死で距離つめて、だんだん俺に心許してくれんのめっちゃ嬉しかった。お前に初めてキスした時とかさー、すげー緊張しすぎてマジで心臓爆発するかと思ったんだぞ」
それはこっちの台詞だ。悠人は平然としてるように見えたのに。
悠人は俺をぎゅうっと抱きしめ、はあ…と長いため息をもらした。
「よかったあ…お前ともう二度と話せないかもとか思ってたから、ほんと嬉しい」
俺だってそう思ってたよ。
「ありがとな、また向かってきてくれて。さっきお前が俺のほう見てくれなかったら、俺たち本当に終わってたよ、たぶん…」
「…うん」
頷くと、悠人が顔をあげて俺を覗きこんだ。
「なあ、キスしていい?」
「…バカか」
「では、お言葉に甘えて」
悠人がにやりと笑った。
もう二度と触れあうことはないだろうと思っていた唇は、かすかに震えている。その震えをのみこむように、俺は悠人の首に手を回した。
――なあ、悠人。
もう一度、お前は馬鹿な俺の手をとってくれたから。
もう二度と、俺はお前から離れたりしないよ。
【完】
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