16 / 16

卒業式-5

「ずっと気になってたんだ、お前のこと。なんかさ、皆と全然違う独特な雰囲気で、どんなやつなんだろうなって思ってて」 悠人のようなクラスの中心からしたら、すみっこの俺なんて眼中にもないと思ってたのに。 「で、勇気だして話しかけてみたら、なんかすげー話しやすいし面白いし。お前みたいなやつ初めてだったから、なんかそれからもうお前のことばっかり考えてて。必死で距離つめて、だんだん俺に心許してくれんのめっちゃ嬉しかった。お前に初めてキスした時とかさー、すげー緊張しすぎてマジで心臓爆発するかと思ったんだぞ」 それはこっちの台詞だ。悠人は平然としてるように見えたのに。 悠人は俺をぎゅうっと抱きしめ、はあ…と長いため息をもらした。 「よかったあ…お前ともう二度と話せないかもとか思ってたから、ほんと嬉しい」 俺だってそう思ってたよ。 「ありがとな、また向かってきてくれて。さっきお前が俺のほう見てくれなかったら、俺たち本当に終わってたよ、たぶん…」 「…うん」 頷くと、悠人が顔をあげて俺を覗きこんだ。 「なあ、キスしていい?」 「…バカか」 「では、お言葉に甘えて」 悠人がにやりと笑った。 もう二度と触れあうことはないだろうと思っていた唇は、かすかに震えている。その震えをのみこむように、俺は悠人の首に手を回した。 ――なあ、悠人。 もう一度、お前は馬鹿な俺の手をとってくれたから。 もう二度と、俺はお前から離れたりしないよ。 【完】

ともだちにシェアしよう!