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卒業式の後に告白ってなんか素敵やん?

体育館と教室棟を結ぶ廊下に桜が吹き込んできた。 俺、片桐 瞬(かたぎり しゅん)は、片手に卒業証書の筒を握りしめ、体育館裏に向かっていた。 今日は高校生最後の日! クラスのアイドル、(あおい)ちゃんに告白する!! そして、童貞を卒業してやるんだ!! 顔も性格もそんなに悪くないはずなのに、何故か彼女ができず、未だに童貞…。 それも、今日で終わりだ。 下駄箱に手紙も入れて、体育館裏に呼び出したし、準備万端だ。…おい、定番とか言うな。 約束は卒業式終わりの11時。 あと15分。 待ってなきゃな。 「瞬ちゃん」 渡り廊下の奥から俺を呼ぶ声。 卒業式だと言うのに、ボサボサの黒髪に、牛乳瓶の底みたいな黒縁眼鏡。着崩した俺とは違い、カッターシャツも一番上までボタンを止めて、ネクタイも上まであげている。ブレザーも全部ボタンを止めて、靴下は学校指定の白い靴下。 品行方正と言えば、品行方正。 悪く言えば、ダサい。 かっこいい奴がすれば、別にダサいなんて思わないけど、何でかこいつがするとダサい。 そして、このダサ男は俺の幼馴染みである、高橋冬馬(とうま)である。 「冬馬、お前こんな所で何してんの?」 「一緒に帰ろうと思って」 「は?昨日言ったじゃん。今日は大事な日だからって」 家が隣同士の俺たちはよくお互いの部屋に遊びに行く。 特に俺が冬馬の家に遊びに行く。 こいつの家は金持ちで、両親も外国で仕事しているから、実質独り暮らし。 よく新しいゲームを買っては遊ばせてもらっている。 服のセンスとかは悪いが、ゲームのセンスはいいと思う。何せ、ゲームの仕方は俺が教えたしな! 「新しいゲーム買ったけど。瞬ちゃんがやりたがってたRPG」 「え!?マジで!…ってだから、今日はダメだって!」 あっぶねー。流されるところだった…。 「……どうせ、またフラれるのに。どうして、そんなに女の子と付き合いたいの?」 「お前、何気に悪口言ったな…。んなもん、デートしたり、イチャイチャしたいからに決まってんだろ!?」 冬馬は興味なさそうに「ふぅーん」と言った。 お前が聞いたくせに、何で興味無さそうなんだよ!! 「……遠藤さんなら、体育館倉庫にいたよ」 遠藤さんとは、葵ちゃんの名字である。 「何でそんな所にいるんだ?」 「遠藤さん、バレー部だったから、何か思い入れでもあるんじゃない?」 なーるほどな。 他人に興味のない冬馬にしてはいい推理だな。 葵ちゃん、一生懸命部活してたし、高校最後の日にバレーボールにお別れを言いに行ったのかもしれないな。 「ありがとう!俺、体育館倉庫に行ってみる!!」 俺は来た道を引き返し、体育館に向かった。 俺は浮かれて気づいてなかった。 冬馬が、後ろで薄く笑っていたことを…。

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