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眠ってもそばにいて

今夜は泊まっていくだろうと聞けば一瞬だけど躊躇った隼人。 ここに泊まるのが嫌とか、俺と一緒にいるのが嫌だというわけではないと思いたい。 「…泊まってもいんですか?」 その言葉の意図はなんなんだろう。 ここに泊める相手なんて隼人しかいやしない。他の誰を泊めることなんてないし、遠慮をする必要もない。 そう思っている。思っているだけではいけないと気持ちを落ち着かせて隼人の顔色を伺う。 「ここに泊めるのは隼人だけだ。それにここは俺達が過ごす家だからな。遠慮は要らないよ」 抱きしめれば身体を預けてくれる愛おしい隼人は今何を考えているんだろう。 俺から離れないと言った。その言葉はずっと有効であってほしい。 「愛してるよ。隼人」 情けない俺はこんな言葉でしか隼人を繋ぎ止める事が出来ない。 離れていた間、どれだけ隼人を想い抱きしめる日を思い描いていたか。この現実を大切にしないといけない。 「僕も…愛してます」 そんな嬉しい言葉を胸の中で返してくれる。 片時も離れたくない俺は、手を繋いだまま部屋を動き回る。何も言わず握られたままついてきてくれる隼人が愛おしくてならなかった。 二人で風呂を済ませ、寝室に入る。一人では広すぎるベッドも隼人がここで眠ってくれることを思い浮かべながら買ったものだ。 シーツの隙間に滑り込んだ身体を引き寄せ抱きしめる。 どうしてだか今日は身体を繋げるより、こうして抱きしめていたかった。 実感したい。 ここに隼人がいてくれるということを。そんな想いのまま、二人の間にできる隙間さえ嫌で、ピタリと合わせる。 足を絡め、腰を引き寄せる。すっぽりと収まった身体は以前より痩せた気がした。 俺だけじゃない、寂しく辛かったのは。そう思わせてくれる腰に回る手に嬉しさがこみ上げる。 祖父が娯楽で建てた家でもこれからは俺達の家だ。なんの遠慮もいらない。 もぞもぞと腕の中で心地のいい位置を見つけるように擦り寄ってくる仕草が可愛くて、隼人は気にしているが、触り心地のいい髪を撫でた。 「琥太郎さん…ずっとそばにいてくれますか?」 意外な問いに胸元を覗き込むと目だけをこちらに向けて返事を待っている。その上目遣いは潤んでいてなんとも色っぽく見つめてくる。 「いるよ。ずっと。もう離れたりしない」 もう離したりしない。 「いや…あ…僕が眠ってもです…」 これからの俺達の事を言っているのかと思いきや、今晩の話を言っていたのかと、額にキスを落とす。 まあこれは口実で隼人に触れてたいのだが。 「目が覚めて琥太郎さんいないとやだなぁって…」 隼人も…そう寂しく思った夜を過ごしていたんだろうか。そうならそれからその寂しさを埋めるのは俺の役目。 「いるよ。独りになんてしない。ゆっくりおやすみ」 背伸びをするように唇にそっと触れた隼人の唇が震えていたのは気づかないフリをしておこう。 一緒に眠り朝を迎える。幾夜も想い慕んだことだ。 「眠ってもそばにいるよ」 嬉しそうに微笑んだ隼人の笑顔に満たされる。 その華奢な身体を抱きしめ、ゆっくりと瞼を落とした。

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