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名前

「ねぇ紅葉」 「なあに?」 「なんで俺のこと“みーくん”って呼ぶの?」 「っ…………そ、れは……」 名前呼びにしようと思った。けどできなかった。その理由は…… 「…………は、恥ずかしかったからよ……」 そう、これ。 拓麻以外の男の人なんて名前で呼ばないしそれに……好きな人を名前で呼ぶってドキドキしちゃうじゃない。前々から知ってる人ならまだしもつい最近知ったばかりの人。だから余計名前で呼べないの。 「はぁー……可愛すぎか」 みーくんがため息をつく。 私そんな変なこと言ったかしら? 「まぁいいや。いつか名前で呼んでね」 「うっ……頑張ります」 私が名前で呼べるのはいつになることやら……。 「よっし!話題変えよ!なんか聞きたいこととかある?」 「そうね……あ、誕生日は?」 「誕生日は11月8日だよ。11月生まれっぽくないでしょ」 「え、ええ……8月感あるわね」 「ふっ……よく言われる」 11月っぽい感じは本当にしない。見た目で誕生日がわかるわけではないけど、雰囲気や名前でわかる人はぽつぽつといる。が、みーくんは全くわからなかった。 「紅葉はいつ?」 「9月28日よ」 「あっ、ぽい!紅葉ってね、漢字が“もみじ”だから秋かなって感じはしてた」 「でしょう。母が病室から紅葉が見えたから私の名前を紅葉にしたって言ってたわ」 「いいな、そういうの。俺なんて適当に決められたからさ」 「そんなことないと思うわよ?」 親にとって子供は宝物。だから名前を適当に決めるなんてことはないと思うんだけど……。それに名前って変えられないし。 「俺の父さんがさ、“光”っていう字が好きで子供には“光”って字を入れるってずっと言ってたらしくてさ」 みーくんが名前についての話を始める。 みーくんにはお兄さんとお姉さんがいる。 お兄さんの名前は光希、お姉さんの名前は光里。 2人とも“光”という字の読み方が違うからみーくんの名前も違う読み方でつけたかったらしい。 それで付けたのが光琉。 「だからこの名前に意味なんてきっとないんだよ」 「そんなことないと思うわよ。私なんて病室から見えた物の名前よ?それに比べたら全然いいと思うわ。って言っても別に名前に不満はないんだけどね」 「俺は大アリだけどね。でも好きな人が呼んでくれる名前なら好きになれるかもな」 「プレッシャーかけないでちょうだい」 私が光琉くんと恥ずかしがらずに言えるのはいつになるのかしら。 一学期中には言えるようになりたいな。 なんて考えているといつの間にか駅についていた。 「紅葉、また明日な」 「ええ。また明日」 バイバイと手を振るとニコッと笑ってみーくんも返してくれた。 高身長イケメン男子が笑ながら手を振るとか反則よね。 きっと私の顔は赤くなっていただろう。 私はそれに気づくことなく電車に乗り家に帰った。

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