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覚の章21

「ほうほう、初めてここの世界には来たが……見事だな」  月の世界に来た鈴懸と白百合は、人間界とはまったく違うその景色に息を呑んだ。  平安を思わせる美しい世界。空中にはきらきらと光の粒子が待っていて、世界全体が輝いている。 「あの屋敷だな」 「……よくそんな風に迷いもなく進もうとするな。もしかしたらその手で織を殺すことになるかもしれないというのに」 「……それは、正直怖いけれど。でも、早く織の所に行きたい」 「ふぅん。まあ、妾は止めないが」  少し離れたところに、立派な屋敷が建っている。明らかに周りとは雰囲気の違うそこは、一層輝いていて、そこに間違いなく玉桂がいるのだと鈴懸は確信できた。 「もう一度言うが、妾はそなたに着いて行くだけだぞ。助太刀もなにもする気はないからな」 「おう、そうか。着いてきてくれるだけでもありがたいよ」 「……ふん」  鈴懸が屋敷に向かっていく。白百合は鈴懸の着物の裾をきゅっと掴みながら、その背中をひょこひょこと追いかけていた。

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