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水色の章6

「……うわ、」  遠くの方に見えていた家。近づくと、異様な家だということがわかった。入り口にびっしりと護符のようなものが貼ってあって、そして荒れている。明らさまな「危ない家」の気配がしたが、立ち止まるわけにもいかない。  ゆっくりと引き戸に手をかけて、開ける。木がぼろぼろになっているせいで扉はなかなか開かなくて、がたがたと音がした。少し開ければ中から異臭がして、思わず織は顔を顰める。 「ごめんくださーい……」 「ギャア―――!!」 「えっ」  家の中に向かって、声をかける。その瞬間だ。奥から、耳を劈くような金切り声が聞こえてきた。  織が驚いて固まっていると、バタバタと奥から先ほどの女性が走ってくる。それはもう、鬼のような形相で。手には木の棒を持っている。 「もう許してくれェ! 私は、私は、おまえを捨てたくて捨てたんじゃないんだ! もう私につきまとうのは、やめてくれェ!」 「えっ、ちょっ、落ち着いてくださ、」 「くるなァ!」  女性は、狂乱状態。織のことなど認識していない。ほかの「誰か」と間違っているようだ。「誰か」を追い払いたい一心なのか、手に持った棒を思い切り、織に向かって振り下ろしてくる。 「ひっ、……」  突然のことであったから、織も避けることができなかった。殴られる、と織は目を閉じて、腕で頭を守る。 「……っ、」  き、と鈍い音が、響いた。骨が思い切り叩かれた音。音だけならば叩かれたのはたしかなのに……一向に織に痛みは襲ってこない。不思議に思って目を開けると…… 「あっ……」  鈴懸に、庇われていた。  鈴懸は後ろから織を抱きしめ、そして腕を織の前にだして代わりに叩かれた。木の棒は太くささくれていて、もしも織が直撃していたらなかなかの大怪我になっていたに違いない。案の定、鈴懸の腕からは血が流れだしている。 「……えっ、」 「……俺は大丈夫だ、怪我はすぐに治る。それより、落ち着いて話せ。この女は少しでも刺激するとまた襲ってくるぞ」 「う、うん……」  鈴懸は織を解放すると、血の流れる腕を舐める。木の棘も少し刺さってしまったらしく、痛そうに顔をしかめている。  鈴懸が庇ってくれたことに驚きながらも申し訳なさを感じた織であったが、鈴懸に何か言葉をかけようとする前に女性が騒ぎ出した。木の棒を振り回し、必死に織を追い出そうとする。  考えてみれば鈴懸の姿は女性には見えていない。だから、女性には織が妙な術を使って攻撃を防いだように見えたのだろう。そのせいでまた混乱してしまった女性だったが、ここでなんとか話をしたい。織は少し女性と距離をとりながら、必死に訴えた。 「話をきいてください、俺は、人間です! 貴女の話を聞きに来ただけです!」 「くるなァ!」 「貴女の呪いを解くことができるかもしれないんです!」 「――え?」

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