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水色の章10
「こ、こないでェ! ごめんなさい、ごめんなさい……!」
織の去った女の家に入ってきたのは、少女であった。髪が長く、浮世離れした少女。織と鈴懸の前に姿を見せた、少女である。
女は少女を見るなりガタガタと震え出し逃げるようにして後ずさる。ここまで女が少女を恐れているのは。少女の見た目は十二・三歳。女の捨てた子どもの年齢が、もしも今生きていたらこのくらいの年齢だ、という歳だから。そして、少女は最近女の周りに頻繁に現れるから。だから……彼女は自分が捨てた子どもの霊なのではないかと、そう思っていた。自分の身の回りでおきる怪異も少女の呪いだと思っていたのだ。
「……」
「待って……入ってこないで!」
少女が、扉を開けてなかに入ってこようとする。その瞬間、女は勢いよく玄関に向かっていった。そして、少女を追い出そうと、少女を突き飛ばす。
「あっ……」
突き飛ばした拍子に、何かが舞い散る。女がそれに気付いたときには、少女は女に背を向けて逃げ出していた。
舞い散ったのは、花びら。少女は女に野花の束を持ってきていたらしい。
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