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第2話家では呑まない②

朝起きていつもと変わらない様子で龍が作ってくれたチャーハンを食べ、ソーセージも焼いてもらってそれも食べて、珈琲も入れてもらって飲んで一息ついたそんな朝だった。 それから5分後の洗面所にて、 「...祈織.....愛してるんだ。」 祈織は何故かついさっきまで友人だった男に告白されていた。 「....っっんぐ。.....ん?...え?...あ、あい?」 朝のニュースを遠耳で聞き流しながら歯磨きをしている時だった。 驚きの反動で歯磨き粉を飲み込みそうになって慌てて吐き出す。 驚いて振り返るといつもの変わらない無表情がそこにある。 (え、何、空耳?) 祈織は思わず自分の耳を疑った。 龍は変わらずの無表情で、歯磨き粉をまとわりつかせた祈織の口を無言でタオルで拭き取って、それからまた口を開く。 「...祈織、愛して...」 「んんえ!!!ちょっとたんま!たんまたんま!」 祈織は先ほどの言葉を続けようとする彼を慌てて止めた。 色々 間違っているような気はするが、告白されるとか。 その前に人が歯磨きしてる時に普通それを言うのか!? 混乱する頭の片隅でふとそんな事を思う。 人はデータが処理しきれないと細かいところに意識を向けたがるらしい。 祈織は自分の友である彼に告白されたのだと現実を受け止めきれていなかった。 兎にも角にも、大急ぎで歯を磨いてうがいをする。 祈織は口をすすぎ終わり、龍に向き直ると龍がポーカーフェイスで話し出す。 「祈織、俺は1年生の時からお前が好きだった。4年だ。言わないつもりでもいたが無理だった。」 いろいろ頭がついていかないんだが龍はいったいどうしたんだ。 昨日まであんなに普通だったろ!? なんで今朝に限って急にそんな事を言い出すんだ。 呆然と立ち尽くしたままでいると、遠くから聞こえる朝のニュースのアナウンサーが9時のお知らせをする。 それを聞いて祈織はハッと思い直した。 勢いに負けて今すぐ返事しなくちゃいけないみたいになってるけれど、別に今すぐじゃなくてもいいんだよな? とりあえずバイト。 バイトに行ってその後考えよう、と。 祈織は目の前にいる龍に視線を移すと、龍の肩をぽんと叩いた。 「...うん。なんだか、どうしたんだか、わかんないけど龍が真剣なのはわかったよ。とりあえずバイトに行くから。その後龍の家に戻るから。話はそれからにしよう。な?」 目を合わせると龍はゆっくり目を瞑って息をはいた。 龍は俺といる時この動作を良くする。 何なのかよくわからないが癖なんだと思う。 そうして龍は「ああ。」と頷いたので、龍のクローゼットに置かせてもらっている自分の洋服に適当に着替えるとバイト先へ急いだ。 龍の家を出てからアパートの階段をぐるぐる降りると足早に駅に向かった。 「ぐるぐるぐるぐる。俺の気持ちもぐるぐる。」 一人でぼやくとはあとため息をついた。 来週2人で温泉に行く予定だったのだ。 「友達とふたりで温泉」なら普通だろう。 ただ「自分のことが好きな男と温泉」ならわけが違うのだといくら鈍感な祈織でもわかるのだった。 そう言えば、仁さんはもういなかった。 仁さんがいれば少しは違ったかもしれないのに。 (何でこんな事になったんだ。) 祈織は心の中で投げやりにぼやく。 祈織は昨日のうちに何が起きたのだと考えながらもう"家では呑まない"ぞと心に決めるのだった。

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