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第10話
気が付けば、泣き疲れて眠ってしまっていた様だ。
中途半端に行為を止めてしまったせいか、嫌な熱がぶり返してきている。
「も…やだぁ……」
こんな身体…もう嫌だ…せめてβ性に生まれたかった…。
溢れる涙を止めることが出来なくて、毛布を掴んでうずくまった。
少しして部屋のドアを開ける音がして、サイドテーブルに何かが置かれたみたいだった。
毛布から少しだけ顔を出すと、抑制剤と水の入ったグラスが置かれていた。
傍らに立つ蒼斗を見上げると、今にも泣き出しそうな顔をしていて胸が痛くなった。
「ごめん、ね…。」
それだけ言って蒼斗は部屋を出て行ってしまった。
「あっ……」
呼び止める間もなかった。
脳裏を過ぎる"拒絶"の文字。
一度は引っ込んだはずの涙が、堰を切ったように溢れた。
出て行く先も無い晴人にとって、蒼斗から拒絶される事は人生の終わりに等しい。
「一人はやだ、よぅ…うっ」
晴人はひとしきり泣いてから、抑制剤を飲み毛布にくるまった。
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