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第130話

熟睡していた。 朝、目覚ましの大きな音で目が覚める。大きなベッドには自分だけだ。これはいつものことで、東城は早起きなのだ。 すっきりとした目覚めだった。 起き上がり、左肩を動かしてみる。昨日より動く。痛みも減っている。着実によくなっているのが実感できる。 一階に降り、キッチンに行くと、コーヒーの香りがしている。東城が電話で話しをしていた。 彼は広瀬に気づくと、電話の相手に返事をしながらコーヒーをマグカップに入れて渡してくれる。 広瀬はパンとスープを軽く温め、冷蔵庫からサラダをとりだしながら東城の話を聞いていた。 何かを指示されて、返事をしている。内容からするとどうやら泊りがけの出張になるようだった。 キッチンの小さなテーブルセットに朝食を並べ、広瀬は椅子に座り食べ始めた。上目遣いに東城を見ていると、しばらくして電話が終わった。 「おはよう」と彼は言った。「昨日より具合がよさそうだな」 「はい」と広瀬はうなずく。 「朝飯中にする話題でもないんだが、近藤理事の死因が確定した」 広瀬はスープをすくうスプーンをとめた。「なんでしたか?」 「絞殺だ。どこかで首を絞められて、山中に遺棄されたようだ。これで、殺人事件になる」 「そうですか」 「遺体は山梨県の山中で見つかってるから、県警に捜査本部が設置される」 「東城さんも入るんですか?」 「入るってほどじゃない。今日、向こうに行ってくる。情報提供しなきゃならない。資料もいっぱいもってくるから、半分荷物持ちに駆り出されるみたいなもんだな。今日は、泊まりになりそうだ」と彼は言った。 殺人事件なのか。広瀬の頭の中には、また、あの二人組のことが思い出される。やはり、関係しているのだろうか。もし、そうだとしたら、自分に何ができるだろう。 「俺、今日いないけど、大丈夫か?」と東城に聞かれた。 夕べ、自分が一人で寝たくないなんていったから、心配しているのだろう。 広瀬はうなずいた。

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