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第186話

だが、5階は様子が違っていた。ドアから薄く灯りがでてきている。 改装工事が終わったばかりのようなフロアだ。段ボールや機材が山積みになっている。 広瀬は、ゆっくりと中に足を踏みいれた。 照明は部分的で、パーテーションの工事中を照らしていた。中途半端な仕切りがされている。 その先に、男が立っていた。 広瀬は、銃を構えようとした。 だが、人の気配に気づいたのか、堀口もこちらを見た。 そして、広瀬より早く銃を抜き、水平に撃ってきた。威嚇も何もない。ためらいもなかった。 とっさに広瀬は身体を下に沈めた。身体を低くして、横にずれた。走って逃げる。 物陰の隙間に逃げたので、堀口からは見えていないはずだ。むこうは、広瀬の動く物音と気配をもとに、撃ってくる。 銃声が追いかけてきた。広瀬は、さらに奥に隠れた。 一瞬だけわずかに顔を出すと、堀口は、こちらの方角を見ていた。 「あの時の、子どもだな。広瀬の息子」と彼は口にした。「お前たち、竹内をやったらしいな。あの時、近藤の言うことなど聞かずに、殺しておけばよかった」 彼が近づいてきているのが声でわかる。だが、まだ、距離はある。 「出て来い。俺がお前のターゲットなんだろう」と堀口は言った。 広瀬は、すぐに撃てるように銃を構えながら立ち上がった。 銃を堀口に向ける。銃声がした。堀口が撃ってきたのだ。だが、広瀬には当たらなかった。 広瀬も、堀口に銃を向けた。 あやまたず相手を撃った。あたった。堀口がその場で足をおり崩れた。 どこにあたったのだろうか。堀口は膝をおさえている。床に血が広がっていくのが見える。 まだ死んではいない。とどめをさす必要がある。弾はまだ後2発ある。 確実に、しとめるにはどこを狙うのがいいのか。 頭か、心臓か。

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