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第185話

広瀬は、銃を手にした。 車を降り、呼吸を整える。 傷ついた元村のことを心配する感情はなくなっていた。 ビルの中、階段を上った。 堀口を見たら、今度はためらわずに撃つ。それだけを考えよう。 ゆっくりと歩き、耳をすます。全身の感覚を研ぎ澄ませ人の気配を探る。 だが、誰かがそのビルにいるのかどうかもわからない。 息を殺して歩いた。 一階ずつ、歩いて確認していく。階段とエレベータもみる。上の階に一つずつ上がっていった。 車はあそこに停めていたが、ここに堀口がいるとは限らない。 時間もたっている。もし、空振りだったら、堀口を一から探さなければならない。 それだけはないように祈りながら、広瀬は歩いた。 ビルの中は、暗い。手探りで行くしかない。どのフロアも、暗く、人の気配がない。

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