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第188話
ビルの構内で破裂音がしている。銃声なのか。
「東城、上のフロアだ」と竜崎が階段を示した。
階段を駆け上がった。また、破裂音がしている。
確実に、銃声だろう。耳が、頭が痛くなる音だ。
走りながら、自分もショルダーホルスターから銃を抜く。
誰が、誰を撃ったんだ。
再度、銃声がしている。
東城は、その場に飛び込んだ。
見えにくい灯りの中で、広瀬が銃を堀口に向けているのがわかった。
彼のガラス玉のような目が、膝をうたれて立てなくなっている男をとらえている。
表情は一切ない。
「広瀬、やめろ」フロアには、東城の声だけが響いた。
声は聞こえたはずなのに、広瀬は、銃の引き金から指をはずすことはなかった。
彼は東城をみようともしなかった。
東城は走り、広瀬前に飛び出し、とめようとした。
乾いた破裂音がした。
広瀬が撃った弾丸がこめかみをかすめ、血が飛び散る。
広瀬の目に何が映っていたのか、東城にはわからなかった。
彼はさらに撃った。
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