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第189話
東城は広瀬の目の前で彼に覆いかぶさるように倒れた。
彼は、顔をしかめ、右の肩口に手をやった。撃たれた直後で痛みはないが、血が際限なく指の隙間から流れていく。
「くそ」と悪態をついて起き上がろうとした。
広瀬はまだ構えて東城ごしに男を撃とうとしている。
彼は、引き金を引いたが、カチリと言う音がするだけで、弾は出なかった。
何度か繰り返し、撃てないことがわかったようだった。
広瀬は震えだした。
「広瀬、やめるんだ」東城は広瀬を抱きこみながら、銃をとりあげた。
そうしながら東城は意識が遠のいていくのを感じていた。
広瀬が悲鳴をあげているのが聞こえた。いや、彼の声は出ていなかったのかもしれない。
彼が珍しく感情をあらわにした表情から、震える身体から、そう思っただけなのか。それとも本当に悲鳴をあげていたのか。
どちらかわからないまま、東城の意識はなくなった。
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