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君だけ
・・・信じられない。
最悪だ。
「・・・ん~・・・かぁわぃ~ね~・・・」
ぬあぁにが、かあわいぃねぇだ・・・。
もうお前とはやっていけない。
俺は出ていく!
「・・・だぁぃ好きだょ~・・・みなこぉ~」
く・・・っ。
誰だミナコって!?
ふざけんな、俺は出てくっ!
出てくんだあーっ!!
「・・・んふ~・・・ぐぅー・・・」
寝ぇるぅなぁあ!
放せええぇ!!
何で俺を抱き締めたまま寝て、寝言で女の子の名前呼んでんだよ!?
まじ最悪っ!
「・・・くっそ」
腕の力が強過ぎだ。
後ろからがっちりホールドされてるし。
ぜんっぜん放さなねーし。
・・・悔しい。
何だよ、女の子が好きならそれでいいじゃん。
何で俺を抱いてんだよ。
俺なんかさっさと放せよ。
「・・・んん、みき・・・?」
腕から逃れようと暴れる俺に、やっと目を覚ました誠 。
腕の中にいるのがミナコちゃんじゃなくて俺だって、ちゃんと認識はしてるらしい。
でもムカつく。
「・・・放せ」
「どぉして?・・・えぇ、まだこんな時間じゃん・・・」
「いいから、放せよ」
「みき?なに暴れてんの?いい子にして・・・」
「やだ、放せっ」
何がいい子にして、 だ。
俺なんかよりミナコちゃんの方がいい子なんだろ?
だったらいい加減放せよ!
「みき、みきちゃん、樹大 くん、どぉしたの?何でご機嫌斜めなの?」
「うるさいっ、いーから放せってば・・・ぅぁっ」
耳元で囁くなあー!
てか、ミナコちゃんにもそれやってんのかよ?
この・・・変態っ!
「俺出てくから、放せ」
「はぁ?どこ行くの?俺を置いて行かなきゃいけないの?」
俺が出てったらミナコちゃんを呼べよ。
そーすりゃいいじゃん!
「お前といたくないっ!だから出てくんだよ!」
「はぁ、そぉですか。じゃ、おやすみ、みき」
・・・て、おい、さっきよりキツく抱きしめて何言ってんだよ?
放せってば!
寝るな!!
もうあんな寝言聞きたくない!!!
「ゃだ・・・放せってば、嫌だっ」
「・・・もぉー、みき!何が嫌なの?はっきり理由を言ってくれなきゃ俺、わかんないんだけど?」
・・・この野郎、俺に言わせんのかよ。
もう出てくだけじゃ気が済まないから、こいつが作ったプラモ全部破壊してからにする。
「俺じゃなくて、ミナコちゃんと寝れば」
「・・・はぃ?みなこちゃん?」
しらばっくれんなよ。
はっきり・・・大好きだって、言ってた癖に。
「・・・俺、みなこって、もしかして寝言で言ったの?」
「・・・・・・・・・」
夢に見るくらい好きなんだろ。
俺に聞かれて、しまった~とか思ってんだろ。
だったらもういいじゃん、俺なんか放せば。
「・・・みき、あのねぇ、みなこは実家で飼ってる犬だよ?」
「・・・・・・・・・は?」
・・・おいおい馬鹿言うな、俺は騙されないぞ。
こいつの実家に犬なんて・・・あれ・・・確かこいつの実家には・・・玄関に・・・あれ・・・犬・・・人懐っこい柴犬で・・・あれ?
「お前んちの柴犬、名前なんて・・・」
「みなこ」
「・・・・・・・・・」
・・・あれぇ・・・・・・?
それって、もしかして・・・俺の勘違い・・・?
「みなこにヤキモチ焼いたの?かぁわいいなぁ~」
べ、別にヤキモチなんか・・・。
「俺がみき以外の子の名前呼んだから怒っちゃったんだね~。ほんと、可愛い」
「ちょ、そんなんじゃ・・・ぁっ」
だから!
耳は弱いからやめろってば!!
「みなこは好きだけど、愛してるのは・・・君だけだよ」
・・・はぁ、馬鹿は俺か。
もう寝よ・・・。
end
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