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雨のち晴れ
いつからだろう、雨の日が嫌いになったのは。
小学生の頃は、傘とか長靴とか、好きだった気がする。
「・・・また雨かよ」
玄関を出て傘をさす。
学校は嫌いじゃないのに、雨だと行きたくなくなる。
あーやだやだ。
梅雨って最悪だ。
なんでこんな季節があるんだろう。
「はぁー・・・」
すげー憂鬱。
やる気出ない。
制服のズボンの裾が少しずつ濡れてイライラする。
「はぁー・・・」
学校に着いてからも、じめじめと湿気っぽい教室の空気が鬱陶しい。
あー、早く梅雨明けてくれ。
「潤 、ため息ばっかついて、幸せ逃げるよ?」
「今は逃げる幸せもねーよ」
「あはは、ネガティブ~」
こんな天気なのに、からっと晴れた日みたいに笑う匠 。
そういやこいつ、晴れ男だったな。
「なあ匠、雨やまして?」
「え?俺に晴れごいしろって?高くつくよ~」
そう言いながら変な動きをし始める匠。
何だその動き・・・。
「潤ちゃんの機嫌が良くなりますよ~にっ!えいっ!」
「俺の機嫌じゃなくて天気をなんとかしてくれよ」
「したよ?」
「は?」
匠が指差す窓の外を見ると、あんなにざーざー降ってた雨が止んでいた。
・・・え、まじ?
晴れごいって、やればできるもんなの?
「・・・すげぇ」
「見直した?」
「うん」
まだどんよりと曇ってはいるが、雨は止んでいる。
それだけで俺の心はだいぶ軽くなった。
「匠、俺お前なしじゃ生きて行けない・・・」
「わお、それってプロポーズ?」
「ちげーよ」
何だよプロポーズって。
こいつ、ほんと馬鹿だな。
「なんだよ~、潤のために雨やますとかすげ~事やってのけたのに、愛の言葉もないわけ?」
「ないない。でも感謝はする。そして明日も頼むな」
「潤、何でそんな雨嫌いなの?梅雨なんだから我慢しなさいよ」
嫌いなもんは嫌いなんだから仕方ないだろ。
我慢する気もない。
「我慢できない。明日もして」
「あ、何かそのセリフ・・・エロい」
「はあ?」
こいつ、馬鹿なだけじゃなく、なんかずれてんだよな。
俺が言った言葉のどこがエロいんだ。
「潤ちゃん、明日も晴れごいしてあげる代わり、ちょっと首傾げながら言ってみ?シテって」
「はぁ?・・・して?」
言われた通り少し首を傾げて「して」と言ってやった。
「まじやべ~、かわい~」
「はあ?て、おいこら、抱き付くなっ」
こいつ、どおやら変な方向にずれてるらしい。
でも、大嫌いな雨を止ませてしまうすげーやつだ。
あまり無下にはできない。
「なあ、なんか分かんないけど言ったんだから明日もしろよ、晴れごい」
「はいはい。潤ちゃんのためなら毎日してあげますよ」
「お前、梅雨には欠かせないアイテムだな」
「アイテムじゃなくて人でしょ・・・」
がっかりしたように項垂れる匠。
確かに、アイテム呼ばわりは悪かったかな。
「梅雨には欠かせない人です、匠様」
「ぉう?いきなり様付け?悪い気はしないっ」
ぱあっと笑顔になる匠。
こいつ面白い。
「匠、お前って犬みてぇ」
「潤ちゃん・・・今度は犬扱い?まぁ、潤ちゃんだから許すけどね」
「俺のための晴れごい犬」
「・・・まぁ、もぉ、それでもいいですよ。でも潤ちゃんのための、だからね」
そんな事を言いながら窓の外を見ると、雲の切れ間から日が射していた。
匠の晴れごい、すげー威力だ。
「匠、これからも俺のための晴れごい犬でいてくれよ」
「はいはい、潤様の仰せの通りに」
end
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