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第二章(15)

「君のオトウサマ、徳重剛造氏もね。で、会合の時はいつも犬猿の仲の二人の怒鳴り声しか響かないらしいんだけど、そのワーキンググループが調査して現在、日本政府が正式にオメガ性だと認めている人数は全国で約二千人、その半分が第一世代のオメガで未成年者なんだ。そしてこの二千人のほとんどを東條大学医学部が検査、認定してる。成人全員じゃないにしても、かなりの人数を協力者として確保できてるよね」  成人オメガの半数が協力しても五百例のデータが集められる。短期間で成果をあげるには良い環境だ。 「でも、この国のオメガは大多数で女が占めてるんだよね。問題は男のオメガの確保なんだけど、男は周囲に知られたくないから絶対に検査なんか受けないわけよ。それに治験になんて協力して、定期的に病院に出入りしているのがばれて勘ぐられるのも恐れてる。リードマンケミカルも当初は男のオメガの確保に苦労した。だけど、東條宣親にはその苦労が無かった。なぜなら!」  島田は一層声を張り上げる。 「いつもそばにいる七瀬彩都がオメガだったから!!」  自信満々に言い切った島田のどや顔が目に浮かぶ。稜弥は黙ったままで、スマートフォンに押し当てていた耳を反対側に代えた。そのまま何のリアクションもない稜弥に、スマートフォンの向こうから探るような声が流れてきた。 「あれ? 俺の予想、いい線いってなかった?」  稜弥は思いきり馬鹿にしたようなため息をわざと披露する。多分、その音は島田の鼓膜を揺らすほどに届いているはずだ。 「それで、あんたは感じたのか?」 「は? なにを?」 「七瀬彩都に対して、あんたは欲情したのか? 彼のオメガの匂いを嗅いで、狂おしい程に抱きたいと思ったか?」 「ちょっと待ってよ。確かに七瀬先生はかわいらしくて守ってあげたくなる雰囲気あるけどさ、残念だけど俺は男は勘弁だ」 「発情状態のオメガのフェロモンの香りは、どんなに強靭な精神力の持ち主でもアルファである限り抗えない。その匂いはベータでさえ感じる程だ。川根さんが発情期の終わりで良かったな。本来ならお前は腰を振ったまま、東條先生に撃ち殺されても夢中で分からないくらいだよ」

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