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エピローグ(終)

 稜弥の返事に彩都は笑って、また二人で深いキスを交わす。互いの素肌を探りあい、稜弥は情熱で鮮やかに紅を挿した彩都の桜斑のひとつひとつに唇を這わせた。その快感に心を震わせて、彩都はゆっくりと稜弥を体内に迎え入れた。 「ああ……」  白い喉を仰け反らせて彩都が喘ぐ。稜弥が深く彩都を穿つと、瞳からひと粒の涙がこぼれた。  稜弥に優しく突き上げられながら、彩都は薄く瞼を開ける。見上げた視界の先に映った桜は、これから宿るであろう命を迎える歓喜に震え、夜風のなかに華やかな香りを振りまいた。  満天の花ばなの祝福に、穏やかな微笑みを浮かべて彩都は小さく囁く。  ―― ありがとう。これから、僕らの時代がはじまる……。  視線を感じて桜から目を離して稜弥を見つめた。彩都を穿っていた稜弥の動きが止まり、右手を伸ばして彩都の髪に触れる。軽く髪を梳いて離れたその手が彩都の前で広がると、淡い桜の花びらがあらわれた。その花びらに、ふっと稜弥が息を吹きかける。花びらはひらりと稜弥の手にひらから舞い上がり、爽やかな風に乗って去っていく。  思わず花びらを追った彩都を引き戻すように稜弥が動き始めた。彩都の体はふたたび喜びの熱をあげていく。自分の中の稜弥を感じながら、笑いかけてくれるその顔にくちづけをして、彩都は愛おしいアルファを優しく抱きしめた。 (サクラモリ 完)

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