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「大丈夫だって。俺も子どもじゃないんだから。それにもしモンスターが現れた時、俺ひとりだったら走って逃げられるけど、今のドゥーガルドは走れないだろ?」
そう言うと、ドゥーガルドは言葉を詰まらせた。
足のケガは深くなく歩く程度は問題ないが、走るとなると少し無理があるようだ。
「大丈夫だって、何かあったらドゥーガルドがくれたこれを鳴らすからさ」
「……ソウシ」
笛を顔の横まで持ち上げてニッと笑うと、ドゥーガルドの心配そうな表情が和らぎ、嬉しそうに頬を緩ませた。
「……分かった。じゃあここで待ってる。でも帰りが遅かったら迎えに行くからな」
「うん、その時はよろしく」
ポンポン、と肩を叩きながら、ようやく納得してくれたドゥーガルドに心の中でほっと安堵の息を漏らした。
もちろんケガの心配もあるが、ドゥーガルドについてきて欲しくない一番の理由は、二人きりになるとドゥーガルドが甘い空気を醸し出すからだ。
普段もべたべたと俺にくっついてくるが、これが二人きりになると距離を詰め、隙あらば押し倒して事に及ぼうとするから全く油断ならない。
ひとりで心細くはあるが、すぐ近くに川があったし、何かあったらこの笛で応援を呼べばどうにかなるだろう。
「よし、それじゃあ俺もいいものを貸してやる」
アーロンは荷物をゴソゴソと探って、ポプリのような小袋を取り出した。そしてそれに紐をつけると俺の首にかけた。
ふわり、と微かに甘い香りが鼻先をかすめた。
「なんだこれ?」
アーロンが人に善意で物を人にあげるとは考えにくい。俺は顔を顰めてそれをつまみ上げた。
「魔除けみたいなもんだ。持っていて損はないと思うぜ。特別にタダで貸してやるよ」
「いや、水を汲みに行ってやるんだから当然だろ……」
アーロンがが行かないから行ってやるというのに、なぜこいつはこうも偉そうで恩着せがましいのだろうか。
俺は溜め息を吐きつつ、水袋を持って川の方へ向かった。
心細さはあったが、仲良く並ぶ首からぶら下がった笛と小袋に、まぁ大丈夫だろうと少しだけ心強くなった。
……だが、全然大丈夫じゃなかった。
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