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「お前みたいな変態は勇者として見過ごせねぇな。余所様に迷惑をかけないように俺が躾けて一生監視しないとな」
興奮が滲んだ声で言って、アーロンは自分の上唇を舐めた。
目には卑猥な光が爛々と輝いている。このぎらついた目には覚えがあった。さっきのモンスターだ。
道理ででモンスターに襲われた時に既視感を覚えたわけだ。
というか、発情したモンスターと重なる男と一緒に旅してるってクレイジーにもほどがあるだろ……!
「こ、この人でなし! 変態鬼畜野郎!」
「ははっ、喚け喚け。そういう生意気な口がきけるのは今のうちだからな。躾が終わったら可愛いおねだりしか言えないようにしてやる」
半泣き状態で喚き散らす俺に、ケケケとさも楽しげに笑う男は悪魔そのものだった。
本当にこいつ人じゃねぇ……!
改めて奴の鬼畜っぷりを痛感していると、アーロンの背後にザッと人影が現れた。
それが誰かも確認する間もなく、アーロンのわき腹めがけて剣が薙ぎ払われた。
切っ先に切られた空気の風圧が俺の鼻先をかすめるのと同時に、アーロンは俺の上からいなくなっていた。
正確には剣に吹き飛ばされた。これもまたモンスターの時と同じ既視感だ。
「……やはりあのクズ一人で行かせるべきではなかったな」
鞘に入れたままの剣を腰に戻しながら、苦々しく吐き捨てる男は俺のよく知る人物だった。
「ドゥーガルド!」
俺は勢いよく上半身を起こした。
「……すまない、笛が鳴ってすぐに動いたんだが足が悪くてすぐに来れなかった」
「いやいや、いいって! むしろ今助けてくれたからすげぇ有り難い!」
あのままアーロンに襲われていたらと思うとゾッとする。本当に救世主だ。
俺の言葉に、申し訳なさそうに目を伏せていたドゥーガルドがほっとしたように表情を和らげた。
「……そうか、それならよかった。怪我はないか?」
ドゥーガルドは膝をついて、俺の顔を覗き込んだ。
「大丈夫。モンスターに襲われる前にアーロンが来たし、アーロンに襲われる前にドゥーガルドが来てくれたからな!」
本当は散々に踏まれた股間が痛かったが、これを怪我として申告するのは恥ずかしいのであえてそのことには触れなかった。
しかしこのむっつりスケベのドゥーガルドが俺の股間の異常に気付かないはずがなかった。
「……だが、ここが可哀想なことになってる」
「……ッ!」
そっと指先でかすめる程度の柔らかさで下半身を撫でられ、体が小さく跳ねた。
確かに俺のものは靴跡や土で汚れて惨めな状態になっていた。枯れた畑に転がる萎びたにんじんみたいな、なんとも言えない哀愁が漂っている。
「……可哀想に」
いかにも気遣わしげに言いながら、下半身の土を軽くはらわれる。
「ん……っ」
さっきまで酷い仕打ちを受けていたそれは、いつも以上に敏感になっていてその優しい手つきにさえもぴくぴくと震えた。
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