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「ふざけんなッ! お前、人がせっかく見直してやろうと思ったのに! やっぱりお前は最低のクズ野郎だ!」  いや、確かにおかしいとは思った。このクズが無償で人を助けるなんて有り得ないことだった。 「うるせぇ。というかお前に見直されたところで俺に何の得もねぇよ。それより股開いてご奉仕しろ」 「誰がするかっ!」 「……このゲスめ……っ! ソウシには指一本触れさせない」  ドゥーガルドが険しい表情でアーロンを睨みつけ、ぎゅっと俺を守るように抱き寄せた。  いや、さっき嬉々として外でヤろうとしていたお前もどっこいどっこいだけどな! ドゥーガルドは俺をぬいぐるみのように抱き締めたまま門番の方へ向いた。 「……門番。今このクズが言ったことは全て嘘だ。……ソウシは俺の伴侶だ」 「お前もなにとんでもない嘘言ってんだ!」  平然と嘘を言い放つドゥーガルドに、すかさず俺は叫んだ。  しかしドゥーガルドはきょとんとした顔で首を傾げた。 「……嘘ではないだろう。王都に帰り次第、親に紹介して式を挙げるのだから」 「誰がそんなこと言った!? それはお前の完全な独りよがりな予定だろ! 俺は一回もいいとか言ってないからな!」 「……安心しろ。たとえ男でも俺の家族は喜んでソウシを迎え入れる。現に家に便りを出したらみんなソウシが家に来るのを楽しみに待っているそうだ」 「なに勝手に話を進めてんだよ!」  この世界には相手の同意を得るという概念がないのか!?  というか、ドゥーガルドのご家族、もっと反対しろ! 息子が男を伴侶に連れてくるんだぞ!? なに普通に喜んじゃってるの!?  もちろん差別意識がないのはいいことだけど、でも差別云々の前にまず俺の同意がないからな! 「……ここで挨拶用の服を買っておこう。ソウシの服はだいぶ古いからな」 「うるせぇ! 余計なお世話だ! って、勝手にお姫様抱っこするんじゃねぇ! 降ろせぇぇぇ!」 「……大丈夫だ、ソウシは羽根より軽い」 「そういう問題じゃねぇ!」  いつの間にか俺を横抱きにして歩き出したドゥーガルドの腕の中でじたばたしていると、ガシッ、とアーロンが肩を掴んで引き止めた。 「おい、なに人の所有物に勝手に触れてんだ?」  額に青筋を立てて今にも殴り掛かりそうな空気を醸し出すアーロン。そんなアーロンに全く怯むことなく、ドゥーガルドは毅然とした態度で睨み返した。 「……貴様のものではない。俺の伴侶だ。勝手なことはさせない」 「いや、お前も結構勝手なことしてるからな!」  自覚がないのがまた恐ろしい。 「というかお前がはっきり決めないからこんな面倒な事になってんだろ? さっさと決めろよ。俺の所有物になるか、このむっつりスケベ剣士の嫁になるか」 「どっちも全力でお断りだ!」  なんで選択肢がその二つしかないわけ!? そんなの「うんこ味のカレーとカレー味のうんこ、どっちがいい?」っていう質問くらい選択肢が鬼畜なんですけど!? 「そんなこと言っていいのか? どっちかを選ばないと今晩は外で野宿だぞ」 「そのクソみたいな選択肢と比べたら迷わず野宿を選ぶわ!」  むしろ喜んで野宿するし! と息巻くと、アーロンはやれやれと言わんばかりに肩を竦めて首を横に振った。

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