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「分かってねぇな、お前。この付近はモンスター出現率が高いんだぜ?」 「え? マジで?」 「しかも盗賊も多い。そんなところで一晩野宿するなんて自殺行為だぞ」 「う……っ」  アーロンの言葉に怯んで野宿一択だった心が揺らぐ。  でも……――、 「……俺の伴侶をそんな危ないところで一晩過ごさせるわけにはいかない。さぁ、俺と一緒に街に入ろう」 「はぁ? なに言ってんだよ、これは俺の所有物だ」  絶対この二人の言いなりにはなりたくねぇぇぇぇぇ!  勝手なことをさも正論のように言い合う二人の間で頭を抱えていると、ジェラルドが見かねたように、ふぅ、と上品に溜め息を吐いた。 「このままじゃいつまで経っても中に入れそうにないね。仕方ない、僕がいいものを貸してあげる」  そう言うと、傍らに置いていた荷物をごそごそと探って赤い首輪と鎖を取り出した。  一見何の変哲もない首輪と鎖だが、ジェラルドが持つとどうしてもいかがわしいものに見えてしまう。 「え? なにそれ? 昼間っから変態プレイはやめてくれよ……」 「違うよ。魔法道具、服従の輪。これをつければ、どんな狂暴なモンスターや獣も鎖を握った人間の言うことをきくって優れものだよ」 「なるほど! それをクロに――」 「つまりそれをこの淫乱につければベッドの上だけでなく日常生活でも俺の言いなりってことか」 「違う!」  なんで今の話を聞いて俺に付けるという発想ができるんだ!? 普通に考えてクロだろ!  まぁ、クロはあんなものつけなくてもちゃんと俺の言うことをきくけど、門番達を納得させるにはその首輪をつけるのが手っ取り早い。 「もちろん人間にも効果はあるけど、今回はクロにつけるのが一番いいと思うよ。ソウシにつけたら今度は鎖をどっちが持つかで言い争いになって面倒だし」  さらっと笑顔で面倒とか言ったな、こいつ……。  ともあれ、これで万事解決だ。俺はドゥーガルドの腕の中から何とか降りて、その首輪と鎖をジェラルドから受け取った。 「ジェラルド、ありがとうな! でもこんないいものがあったなら最初から出してくれよな~」 「ごめんね、本当はこれチェルノのために買ったから汚したくなくて。この街を出るときにまた返してね」 「ソウシ~、それ返す時、その男の首に付けて返してやってねぇ。中身はともかく顔はいいから性奴隷として高く売れるだろうから~」  ひぇ……! チェルノの周りにどす黒い怒りの波動が渦巻いている……! 「ふふふ、僕はこんな首輪を付けなくてももうチェルノの愛の奴隷だよ」 「ここでよくそんなジョークかませるな!」  殺気を漲らせる相手によくもまぁ茶目っ気を含んで返せるものだと、感心を通り越して恐怖すら覚えた。  とにかく、色々あったが、首輪をクロにつけることでようやく俺達は門をくぐることが許された。

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