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「あ、ごめん、無神経なこときいて……」 「いや、私のこの姿を説明するためには避けて通れない話だ。気にするな」 「この姿についてって、人狼だからじゃないのか」 「それだけではない。本来、人狼は自分の意思で狼にも人にもなれる。だが、今の私は満月の夜しか人の姿になることができない」  夜空の満月を見上げて男は言った。月明かりが男の整った横顔をきれいに縁取る。 「なんでそんなことになったんだ?」 「それは……白の魔法使いの呪いだ」  憎々しそうに男はその言葉を吐き捨てた。  白の魔法使いってどっかで聞いたことあるような……。  元の世界の漫画やラノベで出て来た設定だったかな? と記憶を思い返す。  ――白の魔法使いがそいつをやっつけてくれたんだよ!  不意に、クロに石を投げた少年の言葉が脳裏に蘇った。 「あ!」  俺の反応に、まるで頭の中を覗いたかのように男がゆっくりと頷いた。 「あの街の言い伝えは本当のことだ。ただ、黒の使い――私の仲間はもういないが」  なるほど、それでさっきあんなにも辛そうな顔をしていたんだと納得がいった。  しかし、待てよと男の話に引っかかりを覚える。 「でもあの街の言い伝えは確か百年前のことじゃなかったか? ってことは人狼はかなり長生きなのか?」  男を上から下まで見て率直に疑問を口にした。男はどう見ても百年以上生きたようには見えない。どう見ても二十代前半くらいの若い青年だ。 「いや、人狼は特別長寿ではない。寿命は人間と同じくらいだ。これも呪いのひとつだ」  さっきから出てくる呪いという言葉に対して、俺はふと疑問に思った。 「ちょっといいか?」 「なんだ?」 「確かあの街の昔話だと、その、えっと、街を荒らしていた魔法使いとその使い魔たちを白の魔法使いが成敗した、って感じだったと思うんだけど……」 「ああ、そうだ」  当人に失礼かと思ったが街で聞いた通りの内容で確認すると案外すんなりと認めた。  その反応に少しホッとして話を続けた。 「その呪いってその時にかけられたものだよな? でも普通さ成敗するって倒すとか追い払うとかそんな感じじゃん。正直なんでそんな呪いなんてまどろっこしいことをしたんだろうって思って」  前にチェルノが呪いはリスクが高いと言っていたことを思い出す。  まぁチェルノはそのリスクを冒してでもジェラルドを殺したいとのことだったが……。 「俺はあんまり詳しくないけど呪いってリスクが高いんだろ? 街を荒らす悪者を成敗するのにわざわざ魔法使いがそんなリスクのある呪いをかけるかなと思ってさ。街から追い出したりするなら普通の魔法でよさそうだけど」 「その答えは簡単だ。奴は私達を憎んでいた。それこそ自分を犠牲にしてでも復讐したいほどに」  淡々と答える男の言葉に、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。  一体目の前の男は過去に何をしでかしたのだろうか、と緊張と恐怖で微かに鼓動が速まる。 「……とにかく順を追って話そう」  男は静かに自分の過去、そしてその身に受けた呪いについて語り始めた。

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