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第1章 異世界でも俺はこき使われる
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異世界トリップといえば?
チーレムだよね、チーレム!
異世界でチート能力を授かって、個性的な美少女達に囲まれてウハウハなあれ。
男の憧れ。
ご都合主義と言われようが、やっぱり夢見てしまうのが男の悲しい性なわけで。
あ~~~~~!!!!
俺も突然異世界トリップしないかなぁ……。
……なんてこと思っていたら、しました。
異世界トリップ。
うん、確かにした。
異世界にトリップした点については、小説や漫画の主人公達と何ら変わりない。
ただ、俺にはチート能力どころか、なんの能力も授かることはなかった。
しかもハーレムどころか……――。
「……おい、アーロン。お前、ソウシの腕を離せ。嫌がってるだろう」
「はぁ? そういうお前こそ離れやがれドゥーガルド」
重い荷物を背負っている上に、両側から腕を引っ張られ俺はうんざりしていた。
しかも俺を挟んでバチバチと火花を散らすのは美少女たちではない。
俺よりしっかりした体格の男二人だ。
「だいたいコイツは俺のモンなんだよ。なんせ、一番に俺がケツに突っ込んだんだからな」
「おい! 変なことを得意げに言うな!」
そのドヤ顔、今季殴ってやりたい顔ナンバーワンだ。
ドゥーガルドが鼻で笑った。
「……子供のような主張だな。だが、その理論でいけば、俺がソウシと一番最初にキスをした。……つまりソウシは俺のものだ」
「全然つまりじゃねぇから!」
な、なんでこんなことになったんだ……!
確かに異世界トリップしたいと本気で思っていた。
でもはっきりいって全然楽しくもうれしくもねぇ!
クソ! そもそも異世界に行きたいって願ったのも、元の世界の俺の人生が楽しくないのも全部、アイツのせいだ!
アイツ--至道慶介(しどう けいすけ)の顔を思い出しながら俺は奥歯をギリッと噛みしめた。
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