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第10話 他人の荷物はなぜ重い?
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俺たちは、クズ野郎ことアーロンを先頭に森の中を黙々と歩いていた。
木々の葉末の隙間から青い空が覗き見えるが、光は木の葉に吸い込まれてしまっているのかほとんど地上まで届かず、辺りは薄暗い。
いつモンスターが襲ってくるか分からない緊張と旅の疲れのせいか、みんなほぼ無言だ。
はっきりとした音は俺たちの足音と風や獣が木の葉を揺らす音、そして俺の荒い呼吸だけだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
お、重い……!
リュックの紐が肩を抉る勢いで食い込んでいる。
リュックの大きさは俺の背中からはみ出るほどで、もうこれ以上は入らないと言うほどパンパンに詰まっている。
けれど、不幸にもこのリュックには空間魔法というものが使われているらしく、まだまだ物は入るらしい。
魔法のおかげで実際に入っている量よりも遙かに軽くなっているらしいが、それでもこの重さだ。
本当の重さを考えるとゾッとする。
「……おい、もう少し速く歩けねぇのか!」
アーロンが振り返り、苛立たしげに叫んだ。
先頭のアーロンと俺との距離は確かに離れていた。
奴の怒鳴り声が耳に痛くない程度には、距離が空いている。
「む、無理……! これ以上は速くは歩けない……」
むしろ少し遅れてもついてこれていることを褒めてほしいくらいだ。
「チッ、このノロマが」
「まぁまぁ~。ここらへんで休憩にしようよ~」
「僕もチェルノの意見に賛成!」
「テメェの意見は聞いてない」
「……休息も必要だ」
「チッ、分かったよ」
チェルノのナイスな提案のおかげで、俺たちは大きな木の下に腰を下ろすことができた。
はぁ~~~~~、生き返る~~~~!
地面に着いた尻から疲れが土の中に吸い込まれていくようだ。
荷物を降ろして肩を回すとバキバキとえげつない音がした。
俺、大丈夫なのか……?
自分の体が心配になる。
もしかしたらあの時、荷物持ちなんか申し出ずに一人で近くの村を目指した方がよかったんじゃないかとさえ思うほどだ。
「……はぁ」
小さく溜め息を吐いてごろりと地面に寝転がる。
草の匂いと土の冷たさが心地いい。
疲れもあってウトウトとなっていると、
「……おい」
目を薄く開けると、ドゥーガルドが傍に立って俺を見下ろしていた。
悪い奴ではないが、いつも無表情で感情が読めないのでいつも少し緊張する。
本当はまだ横になっていたかったので内心面倒だったが、寝たまま返答するのも悪いので仕方なく上半身だけ起こした。
「えっと、なに?」
「……ちょっと来い」
「え……」
やだ。面倒。
思わず即答しそうになった言葉を何とか飲み込んだ。
ドゥーガルドだからアーロンのように無理難題を押しつけたりはしないだろうが、正直立ち上がるのが面倒なくらい疲れていた。
「……ごめん、今立ち上がるのも無理なくらい疲れていて……」
疲れ具合を表すように再びごろりと寝転がる。
察してくれ……!
今、俺は疲れてるんだ……。
「……そうか、なら仕方がない」
よかった、諦めてくれた……。
ドゥーガルドの察しの良さに感謝しつつ再び瞼を閉じたと同時に、ふわりと体が浮かんだ。
「え……え!?」
目を開けると、俺はドゥーガルドの肩の上にいた。
どうやらドゥーガルドが俺を担いでいるようだ。
「な、なにしてんだよ! つーか、この微妙な高さが怖い!」
ドゥーガルドがいくらがっしりした体とは言え、慣れない体勢が不安定で落ち着かない。
「……一緒に来い」
それだけ言うとズンズンと歩き始めた。
ひ、ひぇぇぇ!
お、落としてくれるなよ!
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