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第15話 お荷物荷物持ち
ザシュ……――!
しかし蔦が俺を叩きつぶすことはなかった。
恐る恐る目を開けると、蔦にはドゥーガルドの剣が刺さっていた。
ドゥーガルドと俺は結構離れていたので彼が駆けつけてきたとは考えにくかった。
「逃げろ! 早く!」
俺に向かってそう叫ぶドゥーガルドの手には剣がなかった。
そこでようやく彼が俺を守るため自分の大事な武器を投げたのだと気づいた。
「ドゥーガルド!」
俺は申し訳ない気持ちでいっぱいで叫んだが、ドゥーガルドに俺の言葉に反応するほど余裕はなかった。
腰から小ぶりの剣を抜き、再び蔦の猛攻に応戦するが不利であるのは戦いの素人の俺が見ても明らかだった。
俺はギュッと拳を握った。
足手まとい以外のなにものでもない自分が情けなかった。
散々アーロンをクズ扱いしたが、正義感の強いだけの足手まといより、強いクズの方が戦いの場では必要なのだ。
でも、俺だって何か役に立ちたい……!
俺は足手まといなりに必死に考えた。
少しでもドゥーガルドの助けになるように……。
考えろ、考えろ……!
荷物持ちがお荷物になってどうする……!
荷物、という言葉にふと、チェルノがくれた光玉のことを思い出した。
ズボンのベルトにくくりつけている袋から光玉を取り出す。
何かあった時のために、念のためいつも持ち歩いているのだ。
ゴクリと唾を飲んで、臆病虫を腹の底に追いやった。
さっき俺を叩きつぶそうとした蔦の残骸が地面でまだのたうっているが、だいぶ動きは弱まっていた。
俺は足で蔦を踏みつけて、突き刺さっているドゥーガルドの剣を抜き取った。
剣を抜いたと同時に、黒い血しぶきのようなものが出てきて足下を濡らしたが気にしてなんてられない。
「ドゥーガルド! 足下に投げる! 受け取ってくれ!」
引き抜いた剣を思い切りドゥーガルドの方へ投げた。
少しずれたけれど、確かに剣はドゥーガルドの足下近くに落ちた。
ドゥーガルドは蔦に応戦しながら、困惑した表情で俺と剣を交互にみた。
「剣を拾って少し下がってくれ! 今から光玉を投げる! 目もつむっていてくれ!」
ドゥーガルドの困惑の表情が深まったが、すぐに剣を拾うと、そのままモンスターと距離をとった。
よし! 今だ!
なるべくモンスターの近くを狙って地面に光玉を叩きつけた。
すると、チェルノが言っていた通り目を焼くような白い光が放たれた。
モンスターが悲鳴のようなうめき声を上げた。
俺の視界が正常になってもまだモンスターの方はのたうちまわっている。
どうやらモンスターに有効な光のようだ。
とどめをドゥーガルドに頼もうと思ったが、どこにもドゥーガルドの姿はなかった。
「ドゥーガルド!?」
まさか逃げたとか!?
ありえないと思ったがどこにもいない。
う、嘘だろ!?
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