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第33話 爆弾発言、連発!

「……おい、草司」 「は、ははははいっ!」 名前を呼ばれただけなのに、体がありえないほど震えた。 「そいつの言ったことは本当か?」 黙秘権など与えない威圧的な声で問われ、俺はたじろいだ。 するとドゥーガルドが得意げに「……ああ、本当だ」と答えた。 「ちょ、ちょっとドゥーガルド!? 空気読め! よく分からんがなんかその答えはやばい気がする!」 本能がガンガンに警鐘を鳴らしている気がしてならない。 「……本当のことだ。奴にも教えてやった方がいいだろう。俺たちの間には誰も入り込む余地はないと」 言い終えるが早いか否かのタイミングで、椅子の大きな破片がドゥーガルドめがけて飛んできた。 難なくドゥーガルドは避けたが、床に突き刺さった破片を見て俺は鳥肌が立った。 もし避けていなかったら、ドゥーガルドは死んでいたに違いない。 サッと血の気が引いた。 「……おい、そこのお前。人のものに無断で触れておいてただでおくと思うなよ」 静かな口調だったが、そこに煮えたぎる怒りが滲んでいるのは明らかだった。 慶介が怒りの感情を見せるのは初めてのことで、俺は驚いた。 奴は性格は極悪だが、怒っているところは見たことがない。 人の怒りをにやにやと煽るタイプの人間だ。 「ははっ! もしかして邪神様はそいつにご執心なのかよ」 緊張が張りつめるこの場にふさわしくない軽薄な笑いが響いた。 もちろんこんな怖いものなしの馬鹿なことをするのは一人しかいない。 ここにも人の怒りを煽って楽しむタイプの人間がいたことをすっかり忘れていた。 「ア、アーロン! 頼む! 黙っていてくれ! とりあえずお前は黙っておこう!」 火に油を注ぐどころか、火にダイナマイトを放り投げかねない奴だ。 俺は泣きそうになりながらアーロンを制した。 だが、アーロンが俺の言うことなどきくはずもなかった。 「残念だったな、邪神様。こいつの処女は俺がもらったぜ」 「アーロンんんんんんん!!!!」 俺は飛ぶようにしてアーロンの元に向かい、手遅れだが奴の口を塞いだ。 馬鹿なのか!? こいつは馬鹿なのか!? 頼むからその煽っていくスタイルやめてくれ! 「…………そうか。よく分かった」 抑揚のない低い声で慶介がそう言った瞬間、鳥が羽ばたく大きな音が頭上に響いた。 驚いて頭上を見た時には、鳥型のモンスターに襟首を掴まれて足が地から浮いていた。 「え? え? えぇぇぇ!?」 モンスターは動転する俺などお構いなしにさらに高く飛び、アーロン達の攻撃が届かないところまで行くと、そのまま慶介のいる玉座まで急降下した。 そして慶介の前に俺をズドンと乱暴に降ろした。 「いててて……」 尻餅をついて痛がる俺など意に介した様子はなく、モンスターは軽やかに着地すると恭しく慶介に頭を下げた。 「邪神様、持って参りました」 「よし、よくやった。褒めてやろう」 「有り難き幸せ」 「……だがその扱いは許せない」 そう言うや否や、慶介は最敬礼するモンスターの頭に向かって何の躊躇もなく手から炎を放った。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ……!」 「こいつは俺の伴侶となる者だ。俺と同等の敬意を払え」 苦悶するモンスターに冷たい目を向けながら淡々と言い放った奴の言葉に、俺は目を見開いた。 「……えぇぇぇ!?」

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