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予想だにしなかった言葉に理解力が追いつかない。 そんな俺などお構いなしに、ドゥーガルドは俺の手を握ったままそっと胸の上に手を置いた。 「……辛かったな、ソウシ。俺も辛い。ソウシの心の中に奴がいつまでも居着いていると思うとその部分を抉り出したい気持ちに駆られる」 「こわっ! 怖いよ、お前!」 切っ先のような鋭い目で俺の心臓を見るな! 演技で震わせていた手にいつの間にか本当の震えが走っていた。 「……だが、過去を変えることはできない」 「そうそう! 俺の心臓を抉っても過去は変わらないからね! 不変だからね!」 「……変えられるのは未来だけだ」 「そうそう! 未来だけ! ポジティブにいこう!」 「……だから今から俺とソウシで明るい未来を築こう」 「なんでそうなる!?」 なんなんだ! このバッドエンド不可避のクソゲーみたいな展開は! どの選択肢を選択してもバッドエンド直行! 「俺のことは気にしなくていいから可愛い女の子と明るい未来を築け! 俺もそうするから!」 それの方が絶対お互い幸せだって! ほぼ保身、おまけで親心のような善意でそう言ってやったのに、ドゥーガルドは眉を顰めた。 「……嫌だ。もしそんな未来があるなら……破壊する」 ドゥーガルドは魔王と戦った時よりも敵意丸出しの目をして言った。 怖いよ! とても魔王を倒した正義の味方とは思えないよ! 「つーか、俺の話聞いてた!? 俺、あの日の記憶がトラウマになってるって言ったよな!?」 「……ああ、言った」 「じゃあ無理強いはよくないだろ!? 俺のこと好きなら俺の気持ち最優先にしようよ!」 「……でも、ソウシのここは嫌がっていない」 そう言ってドゥーガルドが俺のズボンをずり下げると、さっきまでミシェットさんに……いやドゥーガルドに揉みしだかれ半勃ち状態の情けない息子が顔を出した。 「……師匠が言葉で拒否していてもここが反応していれば大丈夫だと言っていた」 「師匠!? 誰だソイツ!?」 「……さっき行ってきた娼館の人気の娼婦で『今まで数え切れない男の体をメスに開発してきたメス堕ちさせるプロ』と言っていた」 「なんでそんなプロフェッショナルが娼館にいんの!?」 いや、そういう需要があるのは知ってるけど、なんで異世界でそんなマニアックな娼婦がいるんだよ! つーか、女の子の体の良さを知ってもらおうとしたのにこれじゃあ本末転倒じゃねぇかぁぁぁ! 「……事情を話したら、喜んでいろんな技を目の前で他の男で実践して教えてくれた」 「そんな生々しい娼館レポは聞きたくない!」 「その上、餞別にと媚薬入りのお香をくれたんだ」 そう言ってベッド横の棚に目をやった。 ランタンのすぐ足元に、まがまがしいピンク色をした陶器があり、模様のように点々と空いている蓋の穴から緩い煙が漏れ出ていた。 まさかあれのせいで、ドゥーガルドをミシェットさんと見間違えてしまったんじゃ……。 意識的に嗅ぐとかなり甘ったるい匂いが鼻を突いた。 鼻の奥に続く脳に何かしらの影響を与えるのもおかしくない話だ。 「なんつーもん持って帰ってるんだ! 早く返してこい! こんなエロアイテム、俺ら童貞には早すぎる!」 「……でも師匠が初めての時はこういう道具に頼った方がいいと言っていた」 「あああっ! なに的確なアドバイスしてくれてんだぁぁ!」 会ったこともない人間をこんなに憎らしいと思ったのは初めてのことだ。 「……そうだ、師匠の言うことは的確なんだ」 そう言うとドゥーガルドは何の前触れもなく突然俺のモノを強く掴んだ。 「い……っ!」 半勃ち状態のそれには暴力的とも言える刺激だった。 下半身の芯を抉るように痺れが走って、体が震えた。

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